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今すぐにここで ページ38

『忘れられたくない、って弱さが生んだ能力なのかも』

視線を下に落として、小さく呟く。静かなここで、彼に伝わるには十分な大きさだった。
彼は背もたれに寄りかかり天を仰ぐ。そのまま変わらず小さく低い声で続けた。

「忘れてしまうかもな……でも、きっかけがあれば意外に簡単に思い出すもんじゃあないか。実際、ここに来たのはガキの頃両親と来たときの一度きりだ。だが来ようと思ったら迷わずに来れた。今の今まで忘れていたのに」

不意に右手が大きな温もりに包まれた。右隣の彼の左手が重ねられていたのだ。
その温もりに一度目を落としてから視線を上げると、彼が優しく微笑んでいた。


「他人の記憶に残るのも、悪いことばかりじゃあない。Aがフィレンツェに戻っても、オレはAのことを思い出したいし次会ったとき久しぶりって笑いたい」

『次が……あるのかしら』

優しく言われてもいらぬ不安が過ぎる。
"次"なんて、今までなかった。

「あるさ。Aが拒んでもオレが会いに行くからな」

不安そうになお一層小さい声で呟くと、間髪入れずに断言される。
先程と同じの、必ずそうなると思わせる瞳で。


『いつも、強引ね』

「いやか?」

『嫌いじゃあないわ』

思わず笑みをこぼしてしまうと、彼の空いている右手が頰に伸びてきて額をくっつけて笑い合い、私も空いている片方の手で彼の頰に触れた。
長めの美しい黒髪が優しく手の甲を撫でる。
この人は髪の毛先から爪先まで優しさでできている、そんな気さえする。

そのままごく自然な流れでお互いの唇を重ねた。
二度、三度と角度を変えて重ねると、流れていたオルガンの音色が止み、わざとらしい咳払いが聞こえてまた小さく笑って立ち上がった。



必然とでもいうように、手と手を自然と握り合わせて車に乗り込み再び街へと走り出したのだった。

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おまきまお(プロフ) - 。さん» それこそ数多の素敵な作品の海から見つけ出して下さってありがとうございます!!本当にお言葉ひとつひとつが嬉しすぎて。様に読んで頂けたことがわたしは何よりも嬉しいです。書き上げて良かった…!!(泣)そしてチャララティギルティ…語呂がよすぎて思わず笑いました (2021年1月28日 3時) (レス) id: e365e09243 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 数多くある作品の中で、この作品に出会えた事が何よりも嬉しいです…。夢主ちゃんの心の強さやブチャラティの優しさとか、2人の距離感がとても好きでした。本当に、素敵な時間をありがとうございました!チャララティ…ギルティですね(唇噛み締め) (2021年1月25日 2時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
おまきまお(プロフ) - さくらんぼ&チェリーさん» 感想ありがとうございます!そうなんです、このまま原作通りにいってしまうとどうしてもハッピーエンドにはならないんですよね……わたしもなんとか夢主ちゃんを幸せにしてあげたいので試行錯誤しているところです。また暇つぶしのお供に読んで頂けたら嬉しいです。 (2019年9月15日 0時) (レス) id: e365e09243 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー - この後ブチャラティは死んじゃって、死んだのを知っても悲しむんだろうな。それとも、夢主ちゃんはそれを知らずに待ち続けるんですかねぇ・・・・・?どう転んでも私の頭じゃハッピーエンドにならない。つながらない・・・・・。すごく素敵な作品でした。 (2019年9月13日 17時) (レス) id: ced51d468f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おまきまお | 作成日時:2019年5月25日 16時

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