正しい道 ページ28
自分で思っていたよりもずっと、オレはまだ弱かったみたいだ。
昨日の午後、父の危篤を知らされそのまま深夜父の旅立ちを見届けた。
病院でひとまずの手続きと手配を済ませ朝方一度帰宅し、出迎えてくれたAに気丈に振る舞っていたつもりだった。
……つもりだったのが今、彼女の胸の中で嗚咽を漏らしながら泣いている。
情けないが、自分では止めることができなかった。
彼女はなにか言うわけでもなくただ抱き締め、髪を撫でてくれた。それはまだただの子供だった頃、母親に同じようにされたのを思い出させた。
落ち着いてから、ようやく今後の予定をAに話す。これから父の遺体とともに故郷へ行き、葬儀と埋葬を済ませなければならない。2、3日は家を空けてしまうのでAも一緒に来てほしいと頼んだ。
Aを1人で残すのが気掛かり、というは表向きの理由で、本当は自分が1人になりたくないだけだった。
それにいざというとき、彼女のスタンドの力を貸してもらおうという浅ましい考えもあった。
彼女は親族でも生前関わりがあったわけでもないのに、と一度は拒んだが今一度頼むと渋々了承してくれた。
少ない親族に知らせを出して、全日雨の中全ての儀式が滞りなく済んだ。
天気とは裏腹に涙は一滴も流れなかったが、たまにどうしようもなく立っていられなくなりその度に誰にも気付かれないようにAの手を握った。
街に戻る予定の日の早朝、オレはもう一度父の墓前に花を手向けたくてそっと宿を抜け出した。雨は降っていないが、今にも降り出しそうなどんよりとした雲に覆い尽くされていた。
墓前にしゃがみ込み、花を手向ける。
父と過ごした日々、組織への入団を決めた日、そして最期の日。
ここ数日何度も何度も思い返した記憶を、今一度思い起こす。
いつのまにか再び降り始めた雨が、身体を濡らしていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おまきまお(プロフ) - 。さん» それこそ数多の素敵な作品の海から見つけ出して下さってありがとうございます！！本当にお言葉ひとつひとつが嬉しすぎて。様に読んで頂けたことがわたしは何よりも嬉しいです。書き上げて良かった…！！(泣)そしてチャララティギルティ…語呂がよすぎて思わず笑いました (2021年1月28日 3時) (
レス) id: e365e09243 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - 数多くある作品の中で、この作品に出会えた事が何よりも嬉しいです…。夢主ちゃんの心の強さやブチャラティの優しさとか、2人の距離感がとても好きでした。本当に、素敵な時間をありがとうございました！チャララティ…ギルティですね(唇噛み締め) (2021年1月25日 2時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
おまきまお(プロフ) - さくらんぼ＆チェリーさん» 感想ありがとうございます！そうなんです、このまま原作通りにいってしまうとどうしてもハッピーエンドにはならないんですよね……わたしもなんとか夢主ちゃんを幸せにしてあげたいので試行錯誤しているところです。また暇つぶしのお供に読んで頂けたら嬉しいです。 (2019年9月15日 0時) (レス) id: e365e09243 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ＆チェリー - この後ブチャラティは死んじゃって、死んだのを知っても悲しむんだろうな。それとも、夢主ちゃんはそれを知らずに待ち続けるんですかねぇ･････？どう転んでも私の頭じゃハッピーエンドにならない。つながらない･････。すごく素敵な作品でした。 (2019年9月13日 17時) (レス) id: ced51d468f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おまきまお | 作成日時：2019年5月25日 16時
