用心 ページ3
『いや、大丈夫です』
道を聞きたいところだが、この国で人を容易く信じてはいけないと嫌という程学んできた。
増してこの暗くなり始めた時間に、異性に。
自分より背の高い男性に、土地勘のないところで身を任せられるほど無知ではない。
「迷っているように見えるが。その荷物、旅行者か？もう暗いし女性なら尚更一人歩きはしない方がいい」
青年がすかさず言い返してくる。
その瞳は真っ直ぐでとても人を騙すようには見えないが、こんな瞳こそ危ないというのも知っている。
だが迷っているのは事実だ。
『……この広場はなんていう名前ですか？』
試しに自分がきちんと分かっていることを聞いてみる。
青年はきょとん、として広場の名称を答えてくれる。
合っている。
あまり素性を明かさないように、詳しく目的地を明かさないように、しかし目的地の近くまで行けるように、聞いてみることにしよう。
『マルコスというスペイン料理屋まで行きたいのですがご存知？』
「ああ、最近できたな。……だがあそこ今日は休みのはずだぜ」
宿の近くの目印だった料理屋を告げると、青年は頷くが不思議そうに返した。
『いいんです。そこまで行きたいのです』
屈せずにはっきりと言うと青年は折れたようでそれ以上はなにも聞かず身体の向きを変えた。
「こっちだ」
歩き始める彼に心身ともに引き締めて続いた。
「ここだ。やっぱり休みだったな」
歩き始めて5分とかからず指定したスペイン料理屋に到着した。
確かに定休日だったようで暗く、シャッターが閉じられていたが店先の看板には マルコス と書かれていた。
と、いうことは本来の目的地はここの裏。
『ありがとうございました。とても助かりました』
気を緩めず機械的に言う私に騙すのを諦めたのか、彼は呆れたように笑った。
「無事に着いてよかった。ここからどこへ行くかは知らねェが、気を付けてな」
右手をひらひらと振って元来た道を戻っていく。
後ろ姿がある程度小さくなったのを確認してマルコスの裏に回る。
今思えば彼は本当にただの親切な人だったのかもしれないけれど、用心に越したことはない。
この先また会うことなんてないだろうし。
とにかく、ようやく目的地に到着した。
明日からの日々に胸躍らせ、眠りに就いた。
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おまきまお(プロフ) - 。さん» それこそ数多の素敵な作品の海から見つけ出して下さってありがとうございます！！本当にお言葉ひとつひとつが嬉しすぎて。様に読んで頂けたことがわたしは何よりも嬉しいです。書き上げて良かった…！！(泣)そしてチャララティギルティ…語呂がよすぎて思わず笑いました (2021年1月28日 3時) (
レス) id: e365e09243 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - 数多くある作品の中で、この作品に出会えた事が何よりも嬉しいです…。夢主ちゃんの心の強さやブチャラティの優しさとか、2人の距離感がとても好きでした。本当に、素敵な時間をありがとうございました！チャララティ…ギルティですね(唇噛み締め) (2021年1月25日 2時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
おまきまお(プロフ) - さくらんぼ＆チェリーさん» 感想ありがとうございます！そうなんです、このまま原作通りにいってしまうとどうしてもハッピーエンドにはならないんですよね……わたしもなんとか夢主ちゃんを幸せにしてあげたいので試行錯誤しているところです。また暇つぶしのお供に読んで頂けたら嬉しいです。 (2019年9月15日 0時) (レス) id: e365e09243 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ＆チェリー - この後ブチャラティは死んじゃって、死んだのを知っても悲しむんだろうな。それとも、夢主ちゃんはそれを知らずに待ち続けるんですかねぇ･････？どう転んでも私の頭じゃハッピーエンドにならない。つながらない･････。すごく素敵な作品でした。 (2019年9月13日 17時) (レス) id: ced51d468f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おまきまお | 作成日時：2019年5月25日 16時
