零くん、あのね！ La fin (降谷零/安室透)

Aéroport ページ19

「このカフェ..ここに立ち寄ってもらえないか？」

降谷が指差したのは、側にあった空港の案内図。
大きなソレは、様々な飲食店名が表記されている。



「Aの..好きな店..なんだ。」


少し照れ臭そうにする降谷に、部下達は同時に顔を見合わせる。


「「承知致しましたっ！！」」

「絶対..報告して下さいよ？..Aちゃんとの事。」

「そうっすよ！降谷さん、水臭いじゃないですか！？婚約者って、」




とある言葉に反応する。いや、ただの個人的なこだわりか？



「... “ ちゃん ” ？」

「あっ...Aさん、」


照れ隠しなのか、降谷の冷静な声が部下達を射抜く。


「ふっ、全くお前達ときたら...もしかしたら、俺は今から振られるかもしれないんだぞ？」



部下達の熱い眼差しを一人で一斉に受け止めながら、困ったように笑い返す。



「降谷さんっ！またそんな事をっ..」


風見は降谷の自傷気味な態度にすぐ様反応し、
勢いよく距離を詰めた。



「いいですかっ？Aさんはっ、」

「分かってる。分かってるさ..」



降谷も両手で参ったよと言わんばかりの素振りで、
くるりと背を向ける。




「じゃ..すまないが..宜しく頼む。」

「勿論ですよ！」



こんな雑踏の中でも、長身で綺麗な金髪をなびかせながら姿を消す上司はどこから見ても目立っていた。





..





A、


Aっ、



打ち合わせ通り目的の場所へ向かいながら、懸命に辺りを見渡す。今1番会いたい者へ電話を発信するも繋がらない。一度止めた足をまた一歩..しっかり前を見据えて進む。



この広いターミナルの何処かに、Aがいる..

もう、絶対に..離さないと決めたのに――



すれ違う人々を流し見しながら、駆け抜けて行く。






..





「あれっ、今のAちゃんぽくないか？」

「おいっ、気をつけろよ？ちゃん付けしてると、また降谷さんから圧力かけられるぞ。」

「いいからっ、ほら？」


広いロビーから飲食街へと足を伸ばした部下2名。
2人の目線の先には、降谷が推察したカフェから
出て来る女性。長い艶やかな髪はゆるく巻かれ、
彼女が動く度にふわりと揺れていた。

手荷物検査はまだなのか、大きなスーツケースと両手の手荷物で移動が大変そうだ。


「..確かに。Aちゃんっぽい。それにしても、可愛いな。」

「っおい！」

「分かってるって、近くに風見さんいたよな？一旦連絡を...」

「いやっ、それより早く引き止めないと、また見失うぞ。」

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