イルカ＊purple (ページ37)

今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:22,650 hit

37 ページ37

抱き締めてやるとホッとしたのが伝わってくる。

「ありがとう。ちゃんと連絡する。」

「ん。」

いつものシャンとした声になったのを聞いて安心した。

落ち着いたAはスマホをもう一度操作して旅館に電話をかけ始めた。

しかし、やはり生まれながらの性格はなかなか直るわけもなく、Aはコール音の間落ち着かない。

そりゃそうか。

「あ、もしもし。Aです。」

電話の向こうからは明るく元気な声が響く。

「そ、その、旅行に出たら…その…。」

なんて言えばいいのか分からないのか、Aは俺の顔を見る。

目が合うとその可愛さに頬を撫でた。

「帰れなくなってしまって…。」

その仕草に安心したのか、目線が柔らかくなる。

堪らず一瞬だけキスをした。

「ごめんなさい…。」

キスするほどまで近くに寄ると相手の声が聞こえてくる。

『住み込みで働いてもらってるんだから、旅行だなんて嘘つかなくても分かるわよー！好きな人にでも会いに行ってるんでしょー？毎週行くものねー！』

豪快な笑い声とは対照的なAの恥ずかしそうな顔。

『いいわよいいわよ、そのまま３日くらい休んでらっしゃい！』

「え、そんな、明日は金曜日ですよ？」

『だってー、平日に無理してでも行くなんて土日休みのお仕事の人なんでしょ？』

「そ、そうですけど…。」

『ここに来てから６年間、Aちゃんは本当によく頑張ってくれたから私からのご褒美よ。ゆっくりしておいで。』

「ありがとう、ございます…。」

優しい人なんだろう、普段どんなふうにAに接してくれてるか分かる。

申し訳なさそうな、嬉しそうな顔のAの顔を見たら俺まで胸が温かくなる。

堪らずキスをしてスマホを取り上げると俺は耳をつけた。

「ちょ…っ。」

「Aの恋人です。今日は本当にすみませんでした。」

『あらやだ！この前のお客さんじゃない！』

「はい、そうです。本当にすみません。」

『いいのよぉー！なんてったってAちゃんが部屋に写真を飾るほど好きな人だものー！』

Aのほうを見ると会話が聞こえてたのか顔を真っ赤にしてスマホに手を伸ばしてくる。

その手をかわすとにっこり微笑む。

「ありがとうございます、女将さん。３日後には必ず返しますから。」

スマホを返してやるとAは慌てて女将さんと話し出す。

その様子を見ながら俺はAの太股に手を伸ばした。