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｢でももうそんな事言えないね。今の千秋くん、めちゃくちゃ輝いてるもん｣
ちょっと膝を擦りむいただけで大泣きするほど弱虫で、ただテレビの前でヒーローに憧れるだけで何も出来なかった男の子がまさか人々に夢と希望を与える側になるだなんて想像すらしていなかった。
千秋くんがこの学校に入ってどんな日々を過ごしてきたのか私にはわからないけれど、きっと彼のことだからたくさん傷付いて泣いて悩んで諦めて、それでも周りの人達に支えられて漸く見つけた居場所が流星隊なのだろう。
なんとなくわかってしまうのは、これでも一応”幼馴染”としてずっと隣で見てきたからなのかな。
｢ありがとう。Aにそう言ってもらえて俺はとても嬉しいぞっ｣
｢それなら良かった｣
にこにこと笑いながら私を見つめる千秋くんに今度は私の方が気恥ずかしくなってしまいそっと視線を下げる。
いつの間にか眠ってしまったたっくんの旋毛をじっと見つめながら帰りはバスかな、なんて考えているとふいに千秋くんが口を開いた。
｢もう1つだけ聞きたいことがあってな。その、……どうすれば俺はもう一度Aの隣に立てるだろうか｣
｢へっ……？｣
｢好きなんだ｣
アイドルになると決めたのは、いっぱい稼いで迷惑ばかりかけてきた家族に楽をさせてやりたいと思ったから。
だけどその中にほんの少しだけ、立派なアイドルになればAに振り向いてもらえるかもしれないという下心もあったんだと話す千秋くんに何も言えないでいると”送ってやれなくてすまんな。気を付けて帰ってくれ”とそのまま講堂から出ていってしまった。
｢えっ……？｣
ちょっと待って。
私今、千秋くんに”好きだ”って言われなかった……？
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作者名：詩梛 | 作成日時：2020年4月26日 23時
