梅 と 松【梅原裕一郎】

どういう感情 ページ22

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食べ終えたアイスの容器を口で膨らませてるAの感情が気になって仕方ない。なんとも思ってなくて歩いてるのか、それともそれを隠してるのか。

『明日収録終わったら監督達とご飯行くんだけど憂鬱なんだよね』
「なんで？」
『ちょっと、なんていうか。セクハラっぽい感じがして』
「は？ダメだろそんなの」
『ダメだよね〜うん。そうだよね。唯一の救いは江口さんとかこうちゃんもいることだけど本当に憂鬱』
「俺も行く」
『いや、出てないじゃん』

少し彼氏面してしまったか。まあ出てないから仕方ないけど。それにしてもあの2人は知ってるのだろうか。
さっきまで楽しそうにしてたAの横顔は、なんだか落ち込んでるように見えた。

次の日の夜、『飲み会行ってくる、憂鬱なう』とLINEが来ていた。「頑張れ」としか送れないのがもどかしい。
男なら「なんかあったら呼べ」くらい言えばいいのにそれが出来ない。彼氏じゃないから。

「頑張れ」に既読が付いてそれから返ってこなかったから多分始まったんだろう。
こっちも収録が再開したから少し気がかりだけど集中することにした。

収録が終わってスマホを見たら着信が何件か来ていた。

A
江口さん
西山
A
A

少しびっくりしてAに折り返したけど出ない。
江口さんにかけても出ない。西山にかけてやっと出た。

「もしもし、どうした」
「ちょっと梅ちゃん大変なことが起こった」
「なに。Aは？なにしてんの？」
「今ちょっと、あの、とりあえず江口さん家来て欲しい」

Aは今どうしてるのか、それが気になって仕方なかった。

「やっと来てくれた。あがってあがって」
「お前ん家じゃないだろ」
「それは置いといて」
「置くな置くな」

リビングに入るとテーブルに突っ伏してるAと背中を摩ってる江口さんがいた。

「あ、梅ちゃん…実は…」

Aが俺ん家に行くところを、たまたま監督が目撃。
一緒に歩いていたから付き合ってるんじゃないかと。二人の関係がバラされたくなかったらこの後ホテルに来いと言われてAは否定したけど信じて貰えず、
無理矢理お開きにしようとしたから逃げるようにして何も言わずカバンを持って店を飛び出た。

ということがあったみたいで、いきなり帰るなんておかしいと思い、江口さんが監督に問い詰めて発覚した。西山はAを追いかけた。

一連の流れを聞いてAはやっと顔を上げた。
泣きすぎて目が腫れていて、見るのが辛くなるほどだった。

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