unexpected *１３０ ページ45
あ「……お願いします……」
その後に続く声は、驚く程にか細く弱々しいものだった。
しかし、俺はAの言葉には従わず、そのまま毛布に手を掛ける。
俺はこいつの様子を見に来たのであって、お願いを聞きに来た訳でない。
毛布を剥がそうと力を込めたが、Aもそれなりの力で握りしめているのか、中々剥がれない。
あ「やだ……ごめんなさい、今は、駄目です。帰って下さい。部屋から、出て、下さい……！」
リ「何がそんなに嫌なんだ？」
あ「それは、その、……駄目です。今はとにかく、早く、出ていって下さい。お願いします……」
言えない理由があるのは分かったが、それでおいそれとこちらも引き下がる訳にはいかない。
リ「……理由が言えねえ奴の行動を見過ごせるほど、こっちは暇じゃねえんだよ！」
あ「あ、あぁ……！」
渾身の力を込めて、毛布を引き剥がした。
ーーと、途端に、嗅ぎ慣れた臭いが広がった。
俺がその臭いの正体を理解したと同時に、目の前にAの顔があった。
リ「ーー！？」
飛びかかられたのだ、と頭で判断する前に、身体が咄嗟に反応し、暴れるAを組み敷いて床に縫い付けた。
足をかけ、体制を崩させたところを両腕を掴んで拘束した。
ぬと、とAの両腕を掴んだ手のひらに、嫌な感触が広がり、眉を顰める。
あ「う、う、ぅ……」
毛布ごしではなくなったAの姿は、ーー両腕と、荒い呼吸を続ける口が特に、真っ赤に濡れていた。
リ「……お前」
言わずもがな、それは血の色だ。
掴んだ腕を見ると、おびただしい歯型が付いていた。
歯型で済んでいるなら、まだマシだった。
完全に肉が抉れて、どくどくと血が流れている箇所もいくつかある。
口元の血と、腕の傷が、何を意味しているのか瞬時に理解し、目眩がした。
ベッドを横目で見ると、シーツに大きな血の染みが出来ていた。
リ「説明しろ、A。これはどういうことだ」
あ「……が、」
リ「あ？」
あ「……お腹が、空いて。お腹が……もうずっと、空いていて……足りなくて……」
うわ言のようにぼそぼそと話し、安定しない視線をさまよわせている。
あ「わ、たし。もう、きっと、駄目なんです……。だって、今だって、食べたくて、食べたくて仕方なくて、あ、嫌だ、嫌だ……そんなの、だって、私は……」
Aの言葉の意味が分かると同時に、恐怖よりも先に、ついに来たかーー、と思った。
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柚音(プロフ) - サンゴさん» お返事遅くなってすみません！ありがとうございます！ゆっくりとですが完結まで書き終えられるように頑張ります！コメントありがとうございました！！ (2019年1月20日 3時) (
レス) id: ba4520d13c (このIDを非表示/違反報告)
サンゴ - 続きめっちゃ気になりますっ！！ (2019年1月17日 22時) (レス) id: f7865afa83 (このIDを非表示/違反報告)
サンゴ - 話が深くて読んでいて面白いです！ (2018年11月19日 18時) (レス) id: f7865afa83 (このIDを非表示/違反報告)
柚音(プロフ) - 赤間利衣さん» あけましておめでとうございます！閲覧頂きありがとうございます！更新頑張ります！ (2018年1月2日 1時) (レス) id: ba4520d13c (このIDを非表示/違反報告)
柚音(プロフ) - ちさきさん» あけましておめでとうございます！コメントありがとうございます、更新頑張ります！ (2018年1月2日 1時) (レス) id: ba4520d13c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚音
| 作成日時：2014年5月20日 19時
