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unexpected *107 ページ21
























「お姉ちゃん」


暗闇の中で、声が聞こえた。


懐かしい。


私をこう呼ぶのは、妹だけ。


「お姉ちゃん、お姉ちゃんってば」


暗闇の中から、妹の姿が浮かび上がる。


くるくると笑う、明るい子だった。


あの時の顔のまま、あの時と同じ声のまま、妹はそこに立っていた。


「ねえ、もう無理しないで」


ーー無理って、何を?


「なんで、なんでそんなに無理するの」


「もういいよ。なんでお姉ちゃんが、こんな所で、無茶しなくちゃいけないの」


ーー無茶なんてしてないよ。


ーーだって、ここで、エレンやリヴァイさんたちの役に立てることが、すっごく嬉しいんだから。


ーーそれが、今の私の、存在価値なんだから。


「でも、もう駄目だよ」


ーー何で?


妹の姿がどろりと闇に溶けた。


目の前から消えた妹に、戸惑っていると、耳元に、しゃがれてひび割れた声。





「そんな体で、何が出来るの?」





目玉が溶けて、指が欠けて、歯が落ちて、骨が変形して、人の形を取れなくなった妹の姿が目の前に現れた。


突然のそれに、思わず身を引いた。


そして気付く。


これは妹の姿じゃない。






ーー鏡に写った、自分の姿だと。










あ「……ぅわああああ!!!」


夢から覚めた。


そこにはいつも通りの、簡素なベッドと、物が無い部屋ーー兵団が使う建物内だった。


あ「は、…う、……夢」


呼吸を整えて、瞬きをゆっくりと繰り返す。


汗で、服が肌に張り付いて気持ち悪い。


けど、それ以上に、得体の知れない恐怖に体が震える。


あ「……」


夢の内容を何度も反芻した。


死んだ妹。


ーー『そんな体で、何が出来るの?』


恐る恐る、毛布を捲って自分の体の様子を確認した。


じっくり観察をしたが、特におかしな点は無い。


だが、この拭いきれない恐怖は一体何だ。


あ「………………あ」


そうだ。


今日は、あの任務からいつから経った?


何月何日の、何時なんだろうーー。

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柚音(プロフ) - サンゴさん» お返事遅くなってすみません!ありがとうございます!ゆっくりとですが完結まで書き終えられるように頑張ります!コメントありがとうございました!! (2019年1月20日 3時) (レス) id: ba4520d13c (このIDを非表示/違反報告)
サンゴ - 続きめっちゃ気になりますっ!! (2019年1月17日 22時) (レス) id: f7865afa83 (このIDを非表示/違反報告)
サンゴ - 話が深くて読んでいて面白いです! (2018年11月19日 18時) (レス) id: f7865afa83 (このIDを非表示/違反報告)
柚音(プロフ) - 赤間利衣さん» あけましておめでとうございます!閲覧頂きありがとうございます!更新頑張ります! (2018年1月2日 1時) (レス) id: ba4520d13c (このIDを非表示/違反報告)
柚音(プロフ) - ちさきさん» あけましておめでとうございます!コメントありがとうございます、更新頑張ります! (2018年1月2日 1時) (レス) id: ba4520d13c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚音 | 作成日時:2014年5月20日 19時

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