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其の肆拾参 冨岡さん17 ページ44

鬼の目に私の姿が映ったようで、そいつの興味は身を縮こませた人から私へと完全に変わっていた。

それでいい、かかってこい!

うなり声を上げ飛びかかってきた鬼を目の前に、私は抜刀し頚を斬り落とした。

この鬼はまだ弱い。

血鬼術も使えないような鬼だ。

それでも対抗する手立てがない人にとっては脅威であることに変わりはないけど。

まだどこかに血鬼術を使う鬼がごろごろといるはず。

だから先に進みたいところだけど、この人のことも気になって動けなかった。

置いていけば、また襲われる可能性もあるから放ってはおけなかった。



「春空様!」



そこに都合よく隊士が二人、姿を見せた。

無傷とはいかずとも、生きてる。

無事でよかった。

その姿に私はホッとした。



「来てくれたんですね」



隊士は私の姿を見つけるなり、緊迫した表情で駆け寄ってきた。

よほど差し迫った状態だったようだ。



「怪我はありませんか?」

「なんとか」
「あの、柱は?」

「冨岡さんが来てくれてます。私が東から、冨岡さんは西から攻めています」



継子とはいえ、私一人ではどうやら不安だったようで柱が到着していることを聞いてようやく安堵していた。



「私はこれから奥に行きます。二人はこの方を守っていてくれますか?」

「………………」
「………………」

「今頼れるのはあなたたちだけです。お願いします」



二人の顔から不安な思いがあふれていた。

ここでなんとかできるなら、はじめから柱の到着を待つ必要などないわけで。

柱が来るのを心待ちにしていた自分たちでなんとかなるのだろうかと思っているのが、その表情から読み取れた。

その気持ち、私にはよくわかる。

冨岡さんに鍛えてもらえるようになるまで、常に私も思っていたことだもの。

でも、今この人を託せるのはこの二人しかいないのだ。



「あなたたちに危険が迫らないように私ができるだけ付近の鬼を狩ります。ですが、万が一の時を二人にお願いしたいのです」

「ーー頑張ります」



意を決したように二人がうなずいたのを見て、私も一つ力強くうなずき返して駆け出した。

もし、ここにいたのが冨岡さんだったら、彼らももっと安心できたし、もっと適切な対応をしてくれただろう。

そう思うと彼らにとても申し訳なくなった。

其の肆拾肆 冨岡さん18→←其の肆拾弐 義勇視点17



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桜花(プロフ) - 風花さん» 改訂版は視点を変えたり、煉獄さんの出会いを早めたりと、色々と修正してますので新作として読んで頂ければと思います。風花さんを始め、既存の読者様にはご迷惑をおかけしておりますがご理解頂ければ幸いです(^^) (2021年6月24日 21時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 風花さん» こんばんは風花さん(〃ω〃)分かりにくくてすみません(><)改訂前の物は続きに行き詰まっていることもあり更新を停止しております。この先の更新は改訂版のみになります。 (2021年6月24日 21時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - 桜花さんこんばんは(*’ω’*)お話の更新につきましてですが、これからはこちらのみという形でしょうか?理解力があまりなく把握しきれていないのですが、これからも楽しみにしております。 (2021年6月24日 19時) (レス) id: 0f5aae934e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜花 | 作成日時:2021年6月2日 7時

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