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其の肆 冨岡さん3 ページ5

この空気、そしてこの()はなんだろう。

普段から口数の少ない冨岡さんだけど、その普段とは違う雰囲気だということは、なんとなく分かる。

分かるからこそ、ここから先の切り出し方を私は知らない。



「桜」

「え?」



ふいに冨岡さんに名前を呼ばれて顔を上げると、さきほどとは違い真剣な表情をした冨岡さんがすっと腕を伸ばし、まだ熱のこもる私の頬に(てのひら)を添えた。

ピクリと私の肩が反応したのが自分でも分かった。

冨岡さんが水を操る剣士だからなのか、ひんやりとした手が熱をもった頬には気持ちいい。

気持ちいいのだけれど、これはこれで恥ずかしくてさらに温度が上がっていくような気がしてならない。



えっと、どうしよう………

そもそも、なんで私は冨岡さんにこんなにドキドキしてるんだろ。

相手は師範、だよね。

回らない頭でそんなことを考えていると、



「桜」



もう一度熱のこもった声で名前を呼ばれ私は思わず顔を上げてしまった。

海よりも深い蒼の瞳なのに、情のこもったその瞳と目が合った瞬間、どきりと胸が高鳴った。(気がした)

私の頬に添えられた冨岡さんの手はそのままだ。

そして、なぜかだんだんと近付いてくる冨岡さんの顔を、私は他人事のように見ていた。

だけど腰に回されそうになった手にようやく我に返り、その腕から逃げるように私は冨岡さんから急ぎ離れた。



「すみません冨岡さん!私、しのぶちゃんのところに行かないといけないので!!」



そのまま、足早にその場から逃げるように家を出た。

今日の冨岡さんは、どこか変だ。


(しのぶちゃんに言ったら、いつも変ですから普通ですって返ってきそう)


それにしても冨岡さん、あんなことする人だったんだ。

知らなかった冨岡さんの一部を見たような気になると、触れられていた箇所に熱が戻ってきたような……感じがした。



(流されるとこだったな……)


私は熱を逃がすように自分のほっぺを両手でペチペチ叩きながら蝶屋敷を目指した。

冨岡さんから流れてくる甘い雰囲気に流されかけたことが無性に恥ずかしい。

そもそも、どうして師範と弟子という間柄であんな雰囲気になったのか。

そう思う私の脳裏から、さきほどの冨岡さんの表情がついて離れなかった。

其の伍 冨岡さん4→←其の参 冨岡さん2



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桜花(プロフ) - 風花さん» 改訂版は視点を変えたり、煉獄さんの出会いを早めたりと、色々と修正してますので新作として読んで頂ければと思います。風花さんを始め、既存の読者様にはご迷惑をおかけしておりますがご理解頂ければ幸いです(^^) (2021年6月24日 21時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 風花さん» こんばんは風花さん(〃ω〃)分かりにくくてすみません(><)改訂前の物は続きに行き詰まっていることもあり更新を停止しております。この先の更新は改訂版のみになります。 (2021年6月24日 21時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - 桜花さんこんばんは(*’ω’*)お話の更新につきましてですが、これからはこちらのみという形でしょうか?理解力があまりなく把握しきれていないのですが、これからも楽しみにしております。 (2021年6月24日 19時) (レス) id: 0f5aae934e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜花 | 作成日時:2021年6月2日 7時

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