思わず零れた涙 ページ29
「...Aさん！」
ドタバタッ！
あ...
「Aさん、Aさん！」
ドタバタッ！
アイツが帰ってきた
ガチャッ...！
「Aさんっ！」
シュタッ...！
寝室のドアを開けるなり
アイツがベッドに寝ている私のところへ
飛ぶようにやって来た
「おかえり、チャンミン(笑)」
そのままベッドサイドに跪き
「具合はどうですか？」
私の前髪を優しく掻き上げながら
眉毛を下げて聞いてくる
「熱は...」
おでこに唇を当てて
「まだちょっとありますね...」
小さくため息をつく
「さっきまで下がってたんだけど
また上がってきちゃったみたい」
「そうですか...」
この短い時間で
アイツが私を心配してくれているのが
痛い程わかる
「そうだよ？
だからそんなに騒がしくしたらダメじゃない」
いつの間に来たのか
あやが寝室のドアに凭れてそう言った
「心配でつい...ごめんなさい」
弱々しく謝るアイツ
「大丈夫だよ、ありがとね」
「シムはホントに、Aが好きなんだね(笑)
私がキッチンから声を掛けたのも気付かなかったでしょ？」
確かに玄関から
すごい勢いでここまで来たよね
「すみません、渡辺さん...
ありがとうございました」
あやの方を向きながらも
私の手を握り締めて離さないアイツの手
それを見たあやが呟いた
「二人はホントに結婚してるんだね」
まぁね
「じゃあダンナ様も帰ってきた事だし
そろそろ帰るね」
「うん。ありがとう、あや」
「いいから寝てて。
あっ...おかゆまた作ったから温めて食べてね、じゃあお大事に」
起き上がって玄関まで見送ろうとする私を止め
あやは帰って行った
今度あやにお礼しないとな
入社したばかりの頃
二人でよく行ったカフェに誘ってみようかな
目を閉じ、少しだけぼーっとする頭で
そんな事を考えていたら
「Aさん、ちょっといいですか」
あやを見送ったアイツが戻って来て
ベッドに腰を下ろした
「Aさん
眠る前に一つだけ言わせて下さい」
「なに？」
アイツが私の手を取った
「A...誕生日おめでとう」
ちゅっ...
そのまま握った手の甲にキス
「チャンミン...」
私を見つめて微笑むアイツの顔が
あまりにも優しくて、思わず涙が滲んだ
「ありがとう...」
ちゅっ...
それをそっと唇で拭ったアイツは
「愛してる...」
そう囁いて
触れるだけの優しいキスを...
してくれた
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作者名：ami
| 作成日時：2013年7月19日 13時
