一本の傘の下 ページ9
「まったく！隼人のヤツ
僕を頭のおかしなヤツ扱いして！」
僕はてっきり、僕とAさんの事を
心配してくれたのかと思ったのに！
「独り言がヤバイ」って
僕の頭を心配してたなんて
「ふんっ！」
それにしても
「はぁ...」
ちょっと早く来すぎちゃったかな
しかも雨降ってきちゃったし
やっぱり、隼人のお母さんが作ってくれた朝御飯
食べてくればよかった...
美味しそうなとろろ芋
「食べたかったなぁ...」
ぐぅ〜
「お腹空いた...」
このままじゃ
また話し合いの途中でお腹が鳴っちゃう
仕方ない
そこのコンビニで何か食べる物買ってこよ
パシャ...
そう思い、駅前にあるコンビニ目指して
雨の中へ走り出した時だった
「え...」
ドクンッ！
どう、して...？
雨の中飛び出した僕の目に飛び込んで来たのは
信じられない光景
Aさんがこの間の男と
一本の傘の下
寄り添うようにして歩いて来る姿だった
どうして...？
同期の家って、女の子じゃなかったの？
ドクンッ、ドクンッ...
心臓が激しく音を立て
それ以外何の音も聞こえてこない
雨の中、馬鹿みたいに佇む僕に気付く事なく
楽しそうに笑いながら
僕以外の男と、相合い傘をしているAさん
どうして...？
何でそんなに楽しそうなの？
昨夜はずっと
その男と一緒だったの...？
話に夢中なAさんは
僕に気付く事なく駅に向かって歩いていく
一本の傘の下
ぴったり仲良く並んだ背中
Aさんが濡れないように
少しだけ傾いた傘
大人な彼なら...
大人な彼なら当然の思いやり？
どうして？
Aさんの世界を
僕だけにしたいのに...
「Aさん...」
どんどん小さくなる二人
この間と同じように
僕の前から消えていく二人
「・・・さん」
「あのぉ...
もしよかったら入りませんか？(笑)」
「Aさん...」
「え？」
「おいてかないで...」
「あの...」
お願いだから
「僕をおいていかないで...」
「あっ、ちょっと傘は・・・」
結局、Aさんの声を一言も聞けないまま
「Aっ...」
僕は一人、駅を後にした
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作者名：ami
| 作成日時：2014年3月21日 0時
