誰も知らない (ページ8)

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……確か、
翔ちゃんに初めて会ったのが、
中学２年の時だったよね。

結構有名な中学だったけど、
俺、小学校で友達いなくて、
あんまり遊ばなかったぶん、
成績は良くてさ。

松本さんも、
お前は高校行かないんだから、
中学はいいとこ行っとけって。

中学受験させてくれて。

２年で、
翔ちゃんと同じクラスになって。

翔ちゃんが教科書の束を職員室まで持ってけって頼まれて、ひとりじゃ大変だから、相葉、お前も手伝えって、先生が言ったんだよね。

俺は人見知りだし、目立たない方だったし、友達も少なかったし…
でも、翔ちゃんはよく話しかけてくれたよね。

家の方向とか違ったから、一緒にいれるのは学校だけだったけど…

しかも俺は学校休みがちだったし。

初めて店に出たのが、中１の時なんだよ。

きつくて、辛くてさ。

身体、痛くて。

学校行けないし、体育もできないし。

みんな、同情してくれてたのかな、
身体弱い子なんだろうなって、
優しくしてくれたけど、
心を許せる友達はあんまりいなかった。

ニノだけね。

しかもニノは毎年クラス違ってさ、
小５から仲良いし、
なぜか同じ中学入ってるんだけど、
同じクラスになったことないんだよ。

翔ちゃんも、ニノとは仲良かったよね。
今も、同じ会社なんだっけ。

…それでさ、２年になって、
翔ちゃんに会って。

やっぱり俺は、学校休んでばっかりだったけど、時々行ったら、翔ちゃんが声かけてくれて、一緒にいてくれて。

いつだっけ、
翔ちゃんが言ったんだよ。

相葉くんは、俺が小学校のとき好きだった女の子に似てるんだ、
って。

その子に、
翔ちゃん、って呼ばれてた、
って。

じゃあ俺も、翔ちゃん、って呼ぶ！
って。

じゃあ俺は、雅紀、って呼ぶよ、
って。

それからだよね、
お互い今の呼び方になったのは。

すごい嬉しかった。

ニノ以外の友達を、
下の名前で呼んで、
下の名前で呼んでもらえるなんて。

そんなの初めてだったから。

お客さんに雅紀、って呼ばれるのと全然違って、
翔ちゃんの声が、あったかくて…

で、気づいたら
翔ちゃんのこと好きになってた。

もっと毎日、
翔ちゃんに会いたかった。

他の子みたいに、
放課後遊んだりしたかった。

でも、翔ちゃんには、俺の家のこと知られちゃいけないと思って。