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…………
夕べのホテルから出て、
静まった街を抜けて行く。
自分たちの店がある場所と違って
地味な住宅街。
マンションの3階。
階段の横のドアを開ける。
「…ただいま」
「…雅紀…?」
「うん…」
リビングのソファーに横たわっている男。
俺の店の店長。
そして、俺の育ての親…。
「あの、松本さん…」
恐る恐る声をかける。
夕べの稼ぎは、朝もらうことにしているから。
俺たちはふたりでこのマンションに住んでいるが、生活は別々だった。
毎朝、店長である松本から給料…日給をもらい、その金でその日の食事をする。金は食事の他に使い道もないので、それで十分だ。
「…テーブルの上、置いてあるから、持ってけよ…あと、いつものカフェで二宮が待ってるって」
「…はい」
テーブルの上の金をつかみ、また部屋を出ていく。
マンションの階段を降り、住宅街を抜けて、大通りの入り口にあるカフェへ向かう。
「相葉さん」
道の途中で呼び止められる。
「あぁ、ニノ…店の中にいるんじゃなかったの?」
俺の小学校からの親友である二宮和也…は、大通り前の電柱にもたれかかっていた。
「どうせここを通るでしょ。まぁ、立ち話もなんですから…」
なんて言いながら、いつものカフェに入って行く。
毎度のことだが、手ぶら。
こいつはいつも財布を持たない。
ふたりで食事をするときもあるが、
必ず俺が払う。昔から。
食事の他に使うことはないし、
別に構わないのだが。
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作者名:紅碧 舞 | 作成日時:2014年12月16日 17時