誰も知らない (ページ13)

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…………

「…そう、それで、以来連絡ないの？」

ゲームから顔を上げないまま、
俺の話を聞く二宮。

いつものカフェで。

先日、店で俺の過去を話してから、
翔ちゃんからは
『仕事でミスがあって、忙しくなった。今週は会えない。ごめん』
と、メールがきただけ。

俺はそのメールに、返信すらしなかった。

「…昔の話も全部言っちゃって、
嫌われたんだろうね、でもいいよ、
翔ちゃんには幸せになってほしいから」

「貴方といたら幸せじゃないと？」

「幸せじゃないよ…
そもそも俺が、幸せとは縁がない人間だから、そんなやつと一緒にいちゃいけないよ」

「貴方は幸せじゃないの？」

「…わかんない…
翔ちゃんといる時は、幸せだった、かも。でもそれ以外は全然だよ…、
何で俺、生まれてきたんだろ…
誰からも、愛されずに…」

「…本気で言ってます？」

「…うん…」

二宮が、
ゲームを切ってこっちを見ていた。

初めて会った時から、
変わらない表情。

いつまでも幼い少年のような。

老けない、というよりか、
最初から全てを悟っているような、
大人びた顔だった。

「…わかりました。何とかしましょう、それに関しては…」

何とかする…？

どういうことだろうか、
この男は昔から、時々訳の分からないことを言うやつだった。

「…じゃ、支払いは頼みます、
ご機嫌よう」

席を立ち、店を出ていく二宮。

支払いの件は置いといて…
携帯を確認する。

店の客からのメールが溜まっているだけで、俺の望む相手からのものはない。

別にいいんだ。

これで、心置きなく死ねるから。

中途半端に幸せよりも、
不幸の方が、未練が残らないはず。

誰も、俺のことを愛していない方がいい。

前に来た、死神、というやつが、
本物かは分からない。

俺が疲れて、
寝ぼけて見た幻覚かも知れないし。

でも、今は死にたいんだ。

もしあれが嘘でも、
俺は、自分で命を絶ってしまおう。

人を殺した俺は、
当然そうなるべきだ。

重い腰を上げて、店へ向かう。

この生活を続けるのも、あと少し。

命日まで、あと１週間と３日。