【あんスタ】存在証明 (ページ9)

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オマツリ 18 ページ9

と、客席に目を向ければ、お客さんとお客さんの間を悠々と渡り歩いて、パンフレットや割引券？か何かを配る羽風先輩が目に入った。

周りの女の子なんて、ステージよりも近くにいる先輩に夢中になっちゃってる。

……負けたくない。

もっとステージを見て！

おれたちを見て！

こんなにキラキラしてるんだから！

朔間くんのピアノによって少しずつアップテンポな曲になっているのに乗じて、おれは1歩前に出る。

ちょっとくらい自由に動いても、バチは当たらないよね！

｢『初めましての人が多いので、ちゃっかり自己紹介させて貰うね！今年からこの学院に編入した、佐倉雅です。年末の【SS】に向けて『Trickster』と一緒に頑張っていくので、今日は名前だけでも覚えていってくださ～い♪』｣

そこまで言うと、つい先日習得したブレイクダンスを決める。

ゴールデンウィーク中にお世話になってたダンスの講師とず～～っと練習頑張ってたんだよ！

ワッと歓声が上がるのと、沢山の視線がおれに注がれているのを感じておれは満足げに微笑んで手を振った。

そのまま1歩下がろうとした、が────

｢───ｯ｣

足が滑りバランスを崩す。

やばっ……！

こんな所で間抜けな姿は晒せない……

折角お客さんの視線を集めたのに、こんな

そんな私の祈りは届かず、地面は近づいてくる。

その時だった。

グイッと腕を強く引かれ、無理矢理立ち直らされる。

｢ま、真緒！？｣

｢このまま踊り続けろ。今回のライブの為に練習した振り付けだ！｣

真緒は私と向き合い、腕を掴んだままステップを踏み始める。

何が何だか分からない私も縺れる足を何とか動かしてステップを踏む。

気づけばなんとか無理矢理繋いだ私と真緒の双子ダンスが全てパフォーマンスのひとつであるかの様に捉えられ、観客が湧いている。

｢す、スゴい！すごいよ真緒！ありがとう！｣

私は思わず真緒に話しかける。

｢魔法みたい！絶対転んで、みんなを白けさせちゃうって思ってた！なのに！真緒ってスゴいんだ！｣

｢そ、そんなに褒めるなよ、雅……｣

顔を紅くしながら目を逸らす真緒。

｢ううん、本当にありがとう｣

気づけば朔間先輩が前に出ていた。

｢『名残惜しくはあるが、そろそろ我輩達との時間も終わりに近づいておる。最高に息のあったダンスを披露してくれた2人に、今一度大きな拍手を送っておくれ』｣

溢れんばかりの拍手に、私と真緒は顔を見合わせニっと笑い合う。

【春の音楽祭】は、こうして大成功に終わった。