第44話 ページ45
「……………ぃ、ッいた…………ぃ」
薄らと目を開けると辺りは舞っているホコリのせいでよく見えない。
僕…まだ生きている?
僕は鋭い痛みの走る右手を持ち上げる。
「_______ひッ」
ザックリと破片が皮膚を裂き、夥しい血が流れている。
傷を視認した直後、激しい痛覚の刺激に追いやられていた身体にかかる重みを感じ僕は目を凝らす。
誰かが倒れている。
真紅に染まった艶やかな長い髪。
それはいつも僕のそばで様々な芸を見せてくれる彼のもので______
「…………………わ、たる…?」
夥しい血に染まった渉の髪。
「………渉」
ゾッと
一瞬で全てを理解した僕の背筋を冷たい物が這う。
僕を庇うように倒れた渉は首と背中の辺りで照明を受け止めてしまった様で既にピクリとも動かない。
なのに渉の傷口からは未だ真新しい血液がポンプのように溢れ出てくる。
「わ、た……………」
目の前が真っ暗になる。
どうして。
3人で生き残るって。
必ず帰るって。
「天祥院くん!!日々樹くん!!一体何が…ッ」
広間に駆け込んできた朔間さんは青い顔をしていて。
渉の血で照明の破片も、渉の服も、髪も、僕の服も、床も、全てが染まっていく。
あまりの惨状に僕は胃から迫り上がるものを吐き出そうとするけれど、漏れるのは空気だけ。
喉が熱い。
苦しい。
「渉…ッくそ…ッおいお前!しっかりしろ!」
駆け寄ってきた朔間さんが僕の背中を擦る。
「ぼ、くは……ッいい……かッら…………わ、たる……ッ………を」
「馬鹿野郎ッ……渉は…もう」
「あき、らめる…ッのか!?ど、にかしてくれよ、……出来…るだろう!?…魔王なら、君なら!!」
僕は息も絶え絶えになりながら朔間さんの胸倉を掴む。
「何でも……出来るだろう……君なら………。沢山の人を救い、愛し愛される君なら…」
「…………………」
「助けて…………渉を、助けてよ……………………………」
僕は朔間さんにすがりつく様に泣きながら、意識を失った。
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卍みきちゃま卍(プロフ) - スーダンみたいで好きだ... (2019年8月23日 9時) (レス) id: 139c03c43b (このIDを非表示/違反報告)
捕鯨船(プロフ) - 報告ありがとうございます!修正しました! (2018年2月3日 19時) (レス) id: b2d51ee9ad (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち@Cherry blossom(プロフ) - それと、38の時"1日しかに7人"となっていました。最後に47のところ"彼を手負いの状態で彼を"となっていました。続編も楽しみにしてます! (2018年2月3日 19時) (レス) id: bd93821e26 (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち@Cherry blossom(プロフ) - コメント失礼します!原作も読んだことあるのですが、また違ったキャラで読むと面白くて、とても良かったです!いくつか気になる点があるのですが、12の時"高峰"となってますが正しくは"高峯"ですよ〜。 (2018年2月3日 19時) (レス) id: bd93821e26 (このIDを非表示/違反報告)
海希 - あ、あと、この事件を知ったあと学院の人達がどんな感じなのか気になります!! (2018年1月25日 22時) (レス) id: 426add2276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なつほ | 作成日時:2017年12月21日 2時