第34話 ページ35
「………くそッ」
広間に戻って力なくソファーを拳で殴ることしか出来ない僕。
そんな僕の様子を心配そうに見つめている渉。
「…ごめんね渉。本当に僕、どうしちゃったんだろう」
力なく笑って見せると、渉は優しく微笑んだ。
「こんな見知った仲の人々が次々に殺されていく状況で理性を保てる人間なんていませんよ」
実を言うと私も狼狽えるのを必死で抑えていますから、と言う渉の表情は、成程確かに少し強ばっている。
類稀なる才能を持った彼でさえ、動揺してしまう。
いやそもそも、僕が奇人と名付けた彼らは才能のある〈高校生〉でしかない。
本物の命を取り合う状況下では、僕らは等しくただの子供なんだ。
魔法なんて存在しない。
僕らを救ってくれる神様なんて、いない。
「……………正直、さ。僕は自分が誰よりも先に死ぬと思っていたから」
目を伏せる。
あぁ、泣いてしまいそうだ。
「……敬人にお経を読んでもらうとか、僕が死んだ後の事をどうしようかとか、そんな事ばかり考えていたから。自分が置いていかれるような未来、想定していなかった」
声が震えそうになるのを必死に堪える。
「だって僕らは普通の高校生だよ?普通に生きていれば、大人になれる。だから、こんな風にみんなに先立たれるような未来、考えた事なかった」
「…英智」
「これは、僕への罰なのかな。君を初めとする沢山の人を犠牲にしてしまった僕への罰?失う悲しみを味わえとでも言いたいのかな。それとも無残に殺されていく恐怖を味わえって?」
僕は沢山の人を傷つけた。
五奇人を次々と残酷な方法で潰して、殺していった事も事実だ。
それでもそれは、必要のある犠牲であって、未来の夢ノ咲学院のために誰かがやらねばならなかった事だと思っている。
たとえ最善の方法ではなかったとしても。
「僕が苦しんだらこの悲劇は終わるのかい?君たちだけでも救えるのかい?」
「英智」
「僕が死んだら_______________」
「英智!!!」
渉が僕の顔を両手で包み込み、無理矢理目を合わせさせられる。
「……この悲劇の目的が、貴方への復讐かどうかはまだわかりません。だから…」
渉の瞳が真っ直ぐ僕を見つめる。
「だから、そんな事言わないでください」
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卍みきちゃま卍(プロフ) - スーダンみたいで好きだ... (2019年8月23日 9時) (レス) id: 139c03c43b (このIDを非表示/違反報告)
捕鯨船(プロフ) - 報告ありがとうございます!修正しました! (2018年2月3日 19時) (レス) id: b2d51ee9ad (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち@Cherry blossom(プロフ) - それと、38の時"1日しかに7人"となっていました。最後に47のところ"彼を手負いの状態で彼を"となっていました。続編も楽しみにしてます! (2018年2月3日 19時) (レス) id: bd93821e26 (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち@Cherry blossom(プロフ) - コメント失礼します!原作も読んだことあるのですが、また違ったキャラで読むと面白くて、とても良かったです!いくつか気になる点があるのですが、12の時"高峰"となってますが正しくは"高峯"ですよ〜。 (2018年2月3日 19時) (レス) id: bd93821e26 (このIDを非表示/違反報告)
海希 - あ、あと、この事件を知ったあと学院の人達がどんな感じなのか気になります!! (2018年1月25日 22時) (レス) id: 426add2276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なつほ | 作成日時:2017年12月21日 2時