【あんスタ】そして、誰もいなくなった 【三年生】

第29話 ページ30

「人形が？」

「はい、あの、5個しかなくて…」

人形の方へ向けた私の視線を追った天祥院先輩がすっと青ざめる。

「深海くん、敬人、月永くん、羽風くんはわかってる…あと1人」

そこまで言って天祥院先輩はゆっくりと振り向く。

そして〈未だ眠ったまま〉の瀬名先輩を見つめた。

全員に緊張が走る。

「…英智、私が」

動かない天祥院先輩を見かねて、日々樹先輩が瀬名先輩の口元に顔を近づける。

そしてすぐに瀬名先輩の手首を掴んで脈をとった。

「_______________」

日々樹先輩が目を伏せて首を横に振る。

つまり瀬名先輩は_______________

「……………」


いつから？


先輩を失った悲しみや犯人への怒りが湧き上がる前に、真っ白になった脳内にその言葉だけがぐるぐる回る。


先輩が眠ってから何度も先輩の顔を覗きこんでいた。


その時先輩は、息をしていたか？


既に死んでいた？


先輩が死んでる事に気づかないまま、私は先輩をただ見てた？


私が見殺しにしたの？


私が気づいてたら先輩は死ななかった？


分からない



分からない



分からない



先輩はいつ、殺された？



血の気が引いていくのを感じると同時に私の視界はぐにゃりと歪み、その場に崩れ落ちた。


「嬢ちゃん！」

「A！」

「Aちゃん！」

「Aさん！」

意識を手放す前に、みんなが一斉に私の事を呼ぶ声が聞こえた気がした。

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