本当の私はいらない (ページ2)

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１話　ページ2

瀬名A視点

父「Aいいか？泉みたいに完璧になりなさい。」

母「父さんの言う通りよ。バレエも泉と同じ位完璧に踊りなさい。」

「……うん。分かった」

父と母のこの言葉を何回も聞いてきた。
それと同じ位、“泉”という兄の名前も何度も聞いた。
小さい頃からこの言葉に縛られていた私は苦しくて悲しかった。
2人は私を見ていなくて、兄である瀬名泉しか見ていなかった。
だから私はもう1人の“ワタシ”を作って2人に見てもらえるように“イイコ”を演じた

(昔)泉「A、どうしたのぉ？またママとパパに言われたのぉ？」

でも、兄は兄だけは私を私として見てくれた。
私は嬉しくて兄が大好きだった。
兄と話す時だけ、自分が自分であれた、思いを話せた。

「ううん！大丈夫だよお兄ちゃん！」

(昔)泉「……ならいいけど」

もうこの頃には戻れないなんて思ってもなかった…