其の拾【流血表現注意】 ページ10
「ッ、は」
【ケタケタケタッ】
僕が思いっきり力を込めて振り下ろしたナイフは、呆気なく狂鬼に奪われ、僕は為す術もなく攻撃されてしまった。
…あぁ、僕はもう駄目なんだ…ここで食べられるのか、怪異と化してしまうか…
どちらかはまだ僕にはわからないけど、もう僕の人生は終わった。
そう悟った僕はゆっくりと目を瞑った所で___
バキッ、という音が、屋根から聞こえた。
「はっはっはぁ！待たせたな！怪異のプロフェッショナル…の、妹！碧さんの登場だぜ！拍手でお迎え下さい！」
先程の音は、文乃先輩が屋根をぶち破った音だったらしい。
穴が開いて光が差し込んだ天井から、文乃先輩が降ってきた。
「…！せ、先輩…！」
「時間稼ぎサンクス！後は私に任せとけ！」
先輩は、狂鬼の腹目掛けて蹴りを入れ、そのまま何処から持ってきたのか、橙色のお札を狂鬼に貼った。
【…グ…ァ】
「ヘイヘーイ！私の可愛い後輩君の腕に傷つけた罰だぞー！たーんと苦しみやがれ！というか一ノ瀬に怪我させて黄牙に怒られんの私なんだぞ！」
【ゥ…グァ…グアァアアァ…！】
「…そろそろうっさい。何？同じようなことしか言わないなお前さん。ボキャ貧なのか？」
そう言って文乃先輩は愛用の万年筆を思いっきり狂鬼の喉に刺した。
途端に静かになったところを見ると、きっと生き絶えたのだろう。
「…一ノ瀬。ありがとな。…大丈夫か？ほれ、応急処置すっから。」
「あ、え、はい…」
「姿を見るに、もう治ったな。…っと。とりまこれで終わり。後で家に帰ってからちゃんと手当てしろよ。」
「…え、この件もこれで終わりですか？」
終わりにしては呆気なく感じるが、実際に自分の吐き気や頭痛は治まっているし、頭を触ってみると角もない。
「おう。…あとの処理は兄さんに丸投げで大丈夫だぞ。」
「…じゃあ、ほんとのほんとにこの件は解決ですか？」
「…まぁ、まだ調べるべき事が無いわけじゃないけど…ほら、なんであのバイト先の神社にコイツがいたのか、とか」
「あぁ、確かに。それがわかるまで僕バイト行きたくないんですけど。」
「ははっ。…まぁ、もう出ないと思うけどな。コイツそんなメジャーではないし」
「え、そうなんですか？」
「おう。そういう意味じゃあ、一ノ瀬は運が良かったんじゃねぇか？…狂鬼って、メジャーじゃないし強いし怖い見た目してるし…貴重な体験だぞー？」
「そんな貴重な体験いらないっす」
「ははっ。…じゃ、帰るか」
「…はいっ」
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作者名：葉千巻 | 作成日時：2019年12月23日 0時
