ダイゴさんの姉の話【pkmn】 (ページ48)

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『だからこれは提案。
私も貴女の提案を受け入れるんだから、少しは譲歩してくれないかな』

にこりと笑う彼女を前に冷や汗が伝った。

自由奔放な彼女はどこか子供のようだが、こんなんでもれっきとした大人なのだ。
有無を言わせぬような雰囲気で、とてもじゃないが首を横に振ることなんてできなかった。

『多分今頃、宇宙センターでもダイゴたちが作戦を練ってると思うんだ。
アイツは貴女のことを信用してないと思うからね』

「そうだろうね。
あんな態度で接したのに信用してるとか言われたら、流石に疑うよ」

『あっはは、それもそうだ。
次元移動装置はもう使えないらしいけど、まだ道筋はあるはず。ダイゴたちもそれを探っているはず。
だから…もしこの作戦がもう無理だと思ったら、今度は私たちの方法でやらせてほしいな』

あ、もちろん貴方の作戦を先に進めさせてもらえるように交渉はするから。
と、Aが笑って言う。

本当に道筋なんてあるのかと言いたくもなった。
その先には不必要な犠牲が生まれないと言い切れるのか……思わず拳を強く握った。
またどうせ、繰り返すのだろうと思わずにはいられない。

……しかし、Aの言う事ももっともだった。
保険は、残しておくべきだ。
この先の未来、何が起きるのかは誰にも分からないのだから。
……まぁ結局は、レックウザが祈りに応えてくれさえすれば…何の問題もないのだが。

「できるの？交渉なんて。
あのお堅い元チャンピオン様が素直に頷くとは思えないんだけどな」

『うーん…確かに。
また文句言われるのが想像できるわ…』

はぁああ、と盛大にため息をつき、面倒くさ気に顔が顰められる。
その姿がなんだかおかしくて。
ヒガナは口の端から笑い声を漏らした。
隣のシガナも、楽しそうに耳を揺らしてヒガナを見上げている。

「わかった、いいよ。
納得いかないとこもあるけど、お姉さんの言ってる事も一理あるからね」

『うん、ありがと』

その時、タン…タンっと足音が響く。
ふとそちらに視線を向ければ、視界に揺れる赤いリボンが映った。

「……ようこそ、龍召の祭壇へ」

そして、この場に足を踏み入れた少女を、ヒガナがAの時と同じように迎え入れた。