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「お疲れ様、ありがとう」
『私の勝ちだね、ミクリ』
倒れた相棒に寄り添い、労いの言葉をかける。
しかし一息つく間も無くAが目の前に立ち、早く空の柱に行かせろと言わんばかりの目でこちらを見つめてくるではないか。
だいぶ、余裕がなさそうだ。
先程のバトルでもそれが見て取れた。
いつもならしないミスの連発、その持ち前の才能とパートナーたちの機転によりカバーできる範囲だったから良かったものの……それがなければ、彼女は確実に負けていただろう。
もちろん、余裕がないのも仕方のないことだとは思っている。
彼女がここに来るまでの電話で、世界の危機だという事のあらましを聞いていたから。
だけど……だからこそ、落ち着いて欲しかった。
「ミロカロス、ハイドロポンプ」
バトルの余韻が抜け、動けるようになった相棒に目配せし、指示を出す。
主人の意図を汲み取ったミロカロスは、何の躊躇いもなく……寧ろいつも以上の勢いでAにハイドロポンプをお見舞いした。
『ちょ、な!何すんの!びしょ濡れ!!!』
突然放たれたハイドロポンプに目を丸くする。
隣では先程までバトルをしていた相棒がくすくすと笑っており、彼女はそれに顔を赤くした。
濡れた顔を腕で拭い、水の滴る前髪を掻き上げる。
髪から水が絞り出せそうなほどにはびしょ濡れだ。
「どうだい?少しは冷静になれたかい?」
『!……もうっ、』
おかげさまで!と笑う。
幾分か緊張がほぐれたような表情だ。
しかしながら、もっとやり方は考えて欲しかったとでも言いたげな目がミクリを睨む。
それに気づかないふりをしながら、タオルを差し出した。
「そんなに焦ることはない。
お前がいつも通りやれば、きっと上手くいくさ」
ふわりとタオル越しに頭を撫でられる。
いい歳して頭を撫でられるという行為は恥ずかしいものだったが、それと同時に不思議な安心感を与えるものでもあった。
『……ありがとう、ミクリ』
「どういたしまして」
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作者名:セレーナ・ラフィーネ | 作成日時:2023年3月15日 22時