ダイゴさんの姉の話【pkmn】 (ページ38)

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『あなたが言いたいのは、そのエネルギーがポケモンの犠牲の上に成り立っている…ってことだよね。
そして、ワープさせた隕石の先にいる人やポケモンの可能性』

「……そうそう、話が早いね。
そこまで理解しててその計画を止めないんだ」

『止めて、他に世界を救う方法がある？』

「確かに世界には必要な犠牲と不必要な犠牲がある。
でも君たちのしようとしていることは……不必要な犠牲を産み出すだけだよ」

握る手に力がこもった。
違うと言いたい、でも言えないのがもどかしい。
それはこれからしようとしていることの重大さをよくわかっているから。

ワープさせた隕石の先にいる人やポケモン…それは、こことは別の世界にいる者たちのことを指す。
この世界と似て非なる世界など、現代において実証されていない。誰もが非科学的だと言うだろう。
しかし、別世界から来たポケモンの話は様々な地方に残されており……それらを知っているAに、目の前の少女の話を否定することはできなかった。

「例えばちょっとだけポケモンの進化の道筋が違う、メガシンカの存在しない世界……3000年前にあの戦争が起こらず最終兵器も作られなかった、そんな世界のホウエン。
そこは突然隕石が現れたらどうなるだろうね？」

『……間違いなく、その世界は滅びるね』

「うん、そう。
その世界に成す術なんてないからね」

しかし、それならばどうすればいいのか。
実証されてもいない別世界のためにこの作戦を諦めるべきなのか、はたまた…その世界に気づかぬふりをして、今この世界を救うべく隕石をワープさせるべきなのか。

考えても考えても、答えは浮かんでこなかった。

「そんなに心配しなくても平気だよ。
私が…ううん、私たちが全部丸っと解決してあげるから」

『私たち？いったい何をするつもりで……』

疑問ばかりが募る。
しかし、目の前の少女は試すように笑うばかり。
焦りが頭の中を支配しているのがわかって、落ち着けと言い聞かせてみるもそれだけで落ち着くなら苦労しない。
焦りは増すばかりだった。

「原始の頃に封印されし場所、"空の柱"。
君ならきっとこの場所がわかるよね」

『え？空の柱って…ちょ、』

「じゃあねお姉さん！
きっとまた、すぐに会えるよ！」

大きく手を振ると走り去っていく。
その背中に手を伸ばすも、手は空を掴むだけで…少女を引き止めることはできなかった。

"空の柱"、そこは古の知識を継承し後の世に伝承する資格を持つ者にしか入れない場所。
そんな場所に……彼女は何の用があるというのか。