ダイゴさんの姉の話【pkmn】 (ページ36)

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『ダイゴ、ちょっと……先に行っててくれない？』

「え？」

デボンの建物から出て、彼らを乗せて運ぶポケモンをボールから出したところで口を開く。
突然の言葉にはダイゴも驚くしかない。

ボールから出た彼女のポケモン…トゲキッスも、心配そうに自身のトレーナーの顔を覗き込む。
心配しないで、とひと撫ですると彼女は再びダイゴの方を向いた。

「急いだ方が、いいんじゃないのかい？」

『私が少しくらい遅れても、ダイゴ一人でケーブルの接続くらいできるでしょ。大丈夫だって』

にこり、安心させるように笑う。
彼女が何を考えているのかはわからない。
だけど、こんな時に無駄なことをする人じゃない。
自分が生まれた時からという長い付き合いでそれはよく分かっていた。

彼女は強い、自分と同等かそれ以上の力を持つ。
だからきっと心配することはない。
大丈夫と言ったら、大丈夫なのだ。

「分かった、だけどなるべく急いで来てくれ。
ハルカちゃんもすぐに隕石を手に入れてくるだろうから」

『うん、わかってる』

エアームドに乗って飛び立つ弟の姿を見送る。
そして"また後で力を貸してね"と笑いかけ、トゲキッスをボールに戻した。

『さて……君は私に何か用かな？
それとも、ダイゴの方に用だった？』

「流石に警戒心が強いね、グッドポイントだよ」

建物の裏から姿を現した黒髪ショートの少女と、彼女の相棒なのか1匹のゴニョニョ。
先ほどからこちらに向けられていた視線、それに気づいていたAは無視することもできず。
ダイゴを先にトクサネへと向かわせ、自身はここに残る選択をした。

「用…といえば用なのかな。
どちらかというと元チャンピオンではなくお姉さんに」

『……初めまして、であってる？』

「うんそう、初めましてだよ。
少し時間あるかな、君と話がしたいな」

不思議な雰囲気を纏う少女。
このタイミングで目的があって近づいてきたのならば、放っておくわけにもいかない。

ちらりと、先ほど出てきたばかりの建物を見る。
もうすぐハルカも出てくるだろう、ここで話していれば彼女の行く道の邪魔になる。
目の前の少女を放っておくわけにもいかないが、隕石の衝突も待ってはくれないのだ。

『少しならいいよ、歩きながら話そうか』

「うんうん、そうこなくっちゃ。
ほら、行くよシガナ」

二人並んで、115番道路の方へと歩く。
トテトテと二人の後を追うシガナと呼ばれたゴニョニョの仕草はとても可愛らしくて、思わず口の端からふっと笑い声が溢れた。