ダイゴさんの姉の話【pkmn】 (ページ29)

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『ん〜！やっぱ品揃えがいいなぁ！』

「……姉貴」

『次はあっちのお店！』

「姉貴！」

大きな声で呼ばれ、ようやく振り返る。
少し先に見える両手に大量の荷物を抱えた弟の姿。
姉は遅いぞ〜と笑いながら、呑気にも手を振っている。

「いったい…何のつもり？」

『何って…ショッピング』

「聞きたいのはそういう事じゃなくて、何でボクが姉貴の買い物に付き合わされてるのか……って事だよ」

『気分転換』

「……姉貴のね。
だいたいボクは今そんな気分じゃな…」

『知ってる、だから連れ出したんじゃん』

にッと、口角があげられる。
そして近くにあったベンチに腰を下ろすと、隣をポンポンと叩いて座るように促す。
それには思わずため息をつきながらもダイゴは隣に座り、両手に抱えた荷物を地面に下ろした。

『そんな気分じゃないのに私のとこ訪ねて来たのは……振り回して欲しかったんでしょ？』

「言い方」

『あっはは、でも間違ってないと思うけど？』

……別に、振り回して欲しかったわけじゃない。
しかし、姉の元を訪ねればこうなることは分かりきっていたはずなのに……それでも訪ねたのは、一人でいる寂しさに耐えかねたからか。

『その悔しさを忘れろとは言わないけどさ、ある程度は過去のことにして前見据えるのも大事だと思うんだよね』

そう言って前を見据える姉が、何だか眩しかった。
彼女の存在はいつだって大きくて、幼い頃もチャンピオンになった後も、その背中を追い続けていた気がする。

『ねぇ、今日最後のワガママに付き合ってよ』

スッとある一点に指がさされる。
まだ何か付き合わされるのか……ため息をつきながらもその先を見た。
そこに広がるのはバトルコート。
それを指さし付き合ってと言うからには、その目的は一つしかないだろう。

『バトルしよう、ダイゴ』

「……何で？」

『何でも、ほら、行くよ！』

スッと立ち上がれば、先程までダイゴが持っていた荷物を両手に抱えてバトルコートへと走り出していく。
その様子を見てまた一つため息をつきながら、その背中を追いかけた。