ダイゴさんの姉の話【pkmn】 (ページ30)

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(……強い)

彼女が強いことなんて分かりきっていた。
昔から彼女の背中を追いかけてきたのだから誰よりも知っていたはずなのに……改めて思わざるを得ない。

互いに残るポケモンはあと一体。
それは同じはずなのに……追い詰められている気さえするのは何故だろうか。

『一番強くて凄いチャンピオンなんでしょ？
だったら、全力で立ち向かって来なよ！』

そう言い放てば、ポケットからキーストーンの埋め込まれたブローチを取り出す。
そして彼女がそれに触れると…エルレイドの首元のメガストーンと反応し、光が溢れた。

『エルレイド、メガシンカ!!!』

眩しい、思わず目を細めた。
どうしたら勝てるのか、勝ち筋を探しながらダイゴはAに続くように胸元からメガラペルピンを取りそれをぎゅっと握りしめた。

「メタグロス、メガシンカ!!!」

フィールドに立つポケモンたちは姿を変え、自身のトレーナーの指示を待ち、互いを静かに見据えている。

さぁ、ここからだ。
いつも通りやって勝てるはずがない。
頭を働かせろ、考えるんだ。

『エルレイド、サイコカッター！』
「！」

慌てて"かわせ！"と指示するが、メタグロスはかわしきれずサイコカッターを受け止めた。
4本の腕を駆使しサイコカッターを弾き飛ばせば、その威力に地面が抉れ瓦礫が舞う。

それらはエルレイドのサイコキネシスにより動きを止め、ピタリと空中にとどまった。

『らしくないね、勝負の途中に考え込んで相手に隙を見せるなんて。
いつもの勢いはどこ行ったの？』

すっと彼女が片手を上げれば、それと同時に宙に浮いていた瓦礫がメタグロスへと向かう。
指示をするよりもメタグロスが先に動きなんとか全てをかわしたが、ダイゴは明らかに焦っていた。

そんな状態でよくAの他の手持ちを倒したものだが……それはパートナーたちの機転と持ち前の才能故か。

『そんなんじゃ、私にだって勝てないよ！』

Aが、口角を上げる。
その顔を…もう、何度と見て来ただろうか。
彼女はずっと家族で、自由奔放な姉で、ライバルで、憧れだった。
ずっと追いかけて来た背中。

負けたくない、勝ちたい。

ぐっと拳を握り、前を見据える。
技と技がぶつかり合い、何度も風が起こり地面が抉れ、視界が奪われた。
それでもただ声を張り上げる。
絶対に勝つ、その一心で……戦い続けた。

…………そして。

『……やるじゃん』

視界が晴れ、キズだらけの相棒の姿が見える。
そしてその先に倒れているエルレイドの姿も見えた。