ダイゴさんの姉の話【pkmn】 (ページ22)

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『カズラくんのパートナーはそのゴーリキー？』

「あ、はい。そうです。
ゴルコって言います」

ライバル候補でないと安心したからなのか、カズラは急に礼儀正しくなり敬語を使い出す。
ルチアはそれにクスクスと笑っていたが、Aはその横でダンボールを持ったゴーリキー…もとい、ゴルコをじーっと見つめていた。

Aにあるのはポケモンに関する知識、コンテストに被るものはあっても…その分野に関する知識は無いに等しい。
たまーに、ミクリから話を聞く程度だ。
しかし、そんなAでも分かるほどゴルコはよく鍛えられよく手入れされていた。
ルチアのライバルを名乗るだけはあるのか、とAは納得した。

『よく育てられてるね』
「！」

「わぁ！カズラくんもゴルコも、Aお姉さんに褒められるなんていいな〜！」

「ま、まぁ？
オレはルチアのベストライバルなんで？
ゴルコがよく育てられてるのも当たり前というか？」

『あっはは！』

その様子には、Aもついに声を上げて笑った。
あー、可笑しい。
褒められて嬉しいのに素直にお礼が言えなくて捻くれてるとことか、ホント面白い。

手を叩いて、大きな声で笑う。
そしてひとしきり笑うと、目尻に滲んだ涙を指の腹で掬った。

『あー、面白い。
私あんまりコンテストとか詳しく無いし、あんま観ないんだけど……二人のことは応援してるね』

じゃあお邪魔しました。と楽屋を出ようとするAを名前を呼んでルチアが引き止める。
その声にくるりと振り返ると、首を傾げて立ち止まった。

「この後時間あるかな？
もう少しお話ししたいな〜なんて」

この後……何かあったっけ？と少し考え込むが、何も浮かんでこない。
それもそのはず、この後に予定などないのだから。
無いものを考えても出てくるはずがない。
あるとすればそれは、研究結果の整理くらいか……しかしそれは今日でなくても別にいいものだった。

『うん、良いよ。
私もルチアちゃんとお話ししたいと思ってたし』

「本当!?同じことを考えてたなんてワンダフル！
じゃあすぐに着替えちゃうから前にあるカフェで待ってて！」

それに頷くとAは小さく手を振って楽屋を出る。
その後ろ姿にはカズラもまた小さく頭を下げた。