ダイゴさんの姉の話【pkmn】 (ページ11)

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「ダイゴ」

「！ミクリ……と、姉貴も」

ピッケルを片手に振り向く。
いつものスーツ姿とは違った山男スタイル。
彼のファンがここにいたのなら、思わず呆然と立ち尽くす姿が想像できてしまう。

普段の爽やかな御曹司スマイルは消え去り、むすっといじけたような表情が浮かぶ。
その目は明らかに姉の姿を捉えており、当の本人はその視線から逃れるようにミクリの後ろへと隠れる。
しかし、すぐにミクリによって前に押し出されてしまった。

「……いったい何しに来たんだい。
どーせまたすぐに違う地方に出かけてくんだろ」

『それは……！否定、出来ないけど…』

「A」

ふいと目を逸らすAを思わず叱る。

正直なところはいかにも彼女らしい。
しかし、こんな時くらいは嘘でも"そんなことない！"と言ってもらいたいものだ。

『でも…ごめん、バトルを途中で投げ出したのはよくなかった…と、思ってる』

「………。」

『だから、もう一度しよう。ポケモンバトル』

ぎゅっと、モンスターボールを握る。
おずおずと見上げる姿は彼女らしくない。
ずっと、ダイゴの顔色を伺っている。
それだけ……申し訳ないと思っているのだろう。
十分に、それは伝わっていた。

「……いいよ、だけどまた投げ出したりなんかしたら今度こそ許さないから」

『もちろん、投げ出したりなんかもうしない。
私と私のポケモンたちが一番強いってこと…教えてあげる』

「ははっ、冗談。
一番強くて凄いのは…ボクたちだよ」

互いにボールを構える。
やる気十分、目をギラリと輝かせる姉弟。
この分なら仲直りしたも同然だな、ミクリは思う。
しかし……この場で最も重要なことを伝えるべく、二人のやる気を遮るように口を開いた。

「やる気十分なのは結構だが、ここでやるつもりか？」

「『あ』」

二人の声が重なった。

ここは洞窟の奥深く。
人こそ来ないかもしれないが、こんなところで熱い勝負を繰り広げては崩れてしまう恐れがある。
それが…チャンピオンとチャンピオンも認める実力者との勝負なら尚更のこと。
二人は、バトルになると時々周りが見えなくなるから。

『じゃあミクリ！ジム貸して！』

「……いいけど」

『ありがと！じゃあルネジムで待ち合わせね！』

また後で！
さっきの落ち込んでいた彼女はどこへやら。
ブンブンと手を振り、来た道を戻っていく。
その後ろ姿をしばらく見つめ、二人はため息をついた。

「……ほんと、お前の姉は自由だな」

「いや…うん、面倒をかけるよ」