第9話 全てを救うこと ページ44
「ここが、空の柱…」
海の真ん中、131番水道にある小さな島。
そこに聳え立つ大きな塔を見上げる。
空の柱という場所がある、ということは昔ミクリから聞いていた。
しかし、よほどのことがなければ立ち入ることの出来ないそこは…Aにとって未知の場所だった。
かつてはここに、レックウザが降臨したというのか。
Aはごくり、息を呑んだ。
「これでよし、と。
空の柱へと続く封印は解除したよ、この中を道なりに進めば空の柱に辿り着けるはずだ」
『うん、ありがとう』
ぐっと拳を握り、歩き出す。
これから何が起こるのかなんてわからない。
あのヒガナという少女の目的だって、憶測の域を出ない。
しかし、世界を守りたいという思いが同じならば。
そこに何が待ち受けていようとも、自分に出来ることをやろう。Aは前を見据えた。
「A」
ミクリの呼び止める声に、足を止め振り向く。
どこか真剣な表情のミクリと視線が交わって、Aは首を傾げた。
「私たちルネの民はその先へ進むことができない。
お前が危ないことをしようとしても、止めてくれる人はいないんだ」
『……うん、わかってる』
「Aのポケモンたちが強いのは知ってるから大丈夫だとは思うが……」
『もう、私も大人なんだけど？
27だよ？そんな心配されるような歳じゃないって』
しかし、ミクリが心配してしまうのも当然と言えば当然のことなのだ。
自由奔放で興味のあることには一直線。
たまに周りが見えなくなるところは…初めて出会った時から少しも変わっていない。
『じゃあ、行ってきます！
ハルカちゃんのことも、ちゃんと案内してあげてね！』
いつも通りの笑顔が浮かぶ。
隣で、彼女を守れたらどれほど良かったか。
そんな考えが浮かぶのは、これから成すことが危険だとミクリも分かっているからだろうか。
隕石の衝突なんて世界の危機。
自分がそんなのに関わるとは思ってもみなかった。
それはきっと、彼女も同じだろう。
段々と、彼女の姿が洞窟の向こうへと消えていく。
その背中が見えなくなるまで見つめ…ミクリはひとつ、息を吐く。
そして後ろに気配を感じ、ゆっくりと振り返った。
「来たね、ハルカちゃん」
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作者名：セレーナ・ラフィーネ
| 作成日時：2023年3月15日 22時
