風紀委員長のわんこですが (ページ29)

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28匹目　入院② ページ29

しばらくして、草壁さんから連絡があった。

【委員長は軽い風邪だそうだ。だが、大事を取って数日間入院される】

夕方応接室

「先ほども言ったが、委員長が学校にいないことは誰にも知られてはならない」

『存在自体が抑止力になっているから、ですか？』

「そうだ」

草壁さんからメモと封筒を渡される。

『これは……』

「委員長に届けてほしい」

メモには難しい漢字がいくつも並んでおり、封筒にはお札が何枚か入っていた。

『私がですか？ …あ、嫌というわけではなく……その……』

草壁さんをちらりと見上げる。

「俺は行かないのかと言うのだろう？

　…実はな、委員長に来るなと言われてしまったのだ。

　病院へ付き添った後もすぐに帰されてしまった」

『そうだったんですか…。わかりました、行ってきます』

漂うもの悲しさに耐えかねて、私は早急に"おつかい"へ出発した。

病院

受付で病室を聞いて委員長のもとへ。

手にぶら下げたカゴの中には、高級石鹸と肌触りの良いタオル。

草壁さんに頼まれたものだ。

委員長は肌が弱いんだろうか……あ、"弱い"とか言ったら怒られそう

コンコン

『失礼します』

「入って」

病室のドアをノックすると、思いのほかいつもと変わらない声が返ってくる。

ガラガラ

広い部屋でひとり、ベッドから身体を起こして読書する委員長がいた。

『石鹸とタオルを持ってきました。ここに置いておきますね』

枕元の台にカゴを置きながら、委員長の顔を見る。

顔色は朝よりはだいぶ良くなっているだろうか

しかし伏し目がちに本を読む姿はどこか儚く思える。

「うるさいよ」

『え………？』

私、喋ってた…？

「君の視線はいつもうるさい」

本から目を離さずに、淡々とそう言う。

心臓が強く脈打つ感覚に襲われた。

『すっ、すみません…。もう帰りま、ひッ』

病室を後にしようとしたとき、足もとがひやっとする。

恐る恐る下を見ると

ボロボロの手が私の足首を掴んでいた。