家族 - 4 ページ29
「……『へいおまち!』って言ってお寿司を出してくれませんか?」
真剣な表情からどんな言葉が出るかと思いきや、予想外の頼みに男2人は一瞬固まった。
山本「ぷっ、はは」
山父「はっはっはっ、そのくらいいくらでもやってやるよ」
ちょっと待ってろよ、と手際よく寿司を握り2人の皿に静かに置く。
そして一言。
山父「へいおまち!」
芸術とも言えるその動きに、大きな拍手が起こる。
山本「さすがだな」
「感動しました!」
気が済むまで手を叩くと、
Aはインスタントカメラを取り出した。
「写真撮っていいですか? ノ…祖父に見せたいんです!」
答えが返ってくる前から両手でカメラを支えて構える。 撮る気満々なようだ。
山父「そうか? かっこよく撮ってくれよ」
山本「親父…」
自分も撮ってもらうつもりでキメる父を見て微妙な顔をした。
「なにしてるの、山本さんも撮るよ!」
山本にレンズを向ける。 写らない気なのは彼だけのようだ。
小さな手を震わせながら楽しそうなAを見ていると、なんだかやる気が出てきた。
山本「持つぜ」
「…! ありがとう」
Aからカメラを受け取る。
山本の手には少し小さいくらいだった。
山本「イタリアではなんて言って撮るんだ?」
「ファミリア、家族って意味だよ」
山本「…! 家族、か」
山父「いいじゃねーか」
でしょ、と得意な顔をする。
「じゃあ、せーの!」
それぞれの"家族"を思い浮かべて。
【END】
72人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:波紋セラーノ | 作成日時:2020年4月26日 16時