10話「ドクターとして」 ページ10
「君が宝生永夢先生か」
「はじめまして」
「活躍はポッピーピポパポから聞いている」
「ポッピーで〜す!…て、今は明日那って呼んで」
「ああ、失礼」
永夢と檀黎斗が握手を交わす。
「話は聞いた。例の黒いエグゼイドの正体がわかったというのは本当か?」
「ガシャットを盗んだ犯人の男で間違いない」
「ならばその男を締め上げて、ガシャットを取り戻してくれ」
「でも…!その人、ゲーム病で苦しんでました。きっと今も、僕たちの助けを必要としているはずです!」
「相手は犯罪者だ」
「だとしても患者です!」
「忘れたのか?そうやって患者に寄り添いすぎた結果、お前は花家大我にガシャットを奪われたんだ!お前の綺麗事にはうんざりだ!!」
「患者を見捨てるなんて、ドクターじゃない…」
「あっ、ちょっ…永夢!」
鏡飛彩と口論をした後、CRを出て行く永夢。
それを追って出て行く檀黎斗に明日那。
「ドクターとして、ゲーム病で苦しむ患者を救うか、それとも、ガシャット泥棒として犯人を捕まえるか」
「あいつは何もかも甘すぎる!」
机をバンッ!と叩く鏡飛彩。
机に置かれたコーヒーカップの中身が揺れる。
私ははあ…とため息をつき
「それが、研修医ならではの葛藤なのでは?目の前に救える患者がいるなら救いたい。救えない患者だとわかっていても、救いたい。今の彼は、そう言う気持ちなんでしょう」
「お前に何がわかる」
「わからないですね。私、所詮ただの事務員なので」
「だったら余計な口を挟むな!」
怒りの矛先が私に向く。
今はそれでいい
「そうやって発散して、あなたの気が済むなら」
「!」
「私はどんな時だって、汚れ役を引き受ける」
「……お前は一体…何がしたいんだ…」
「さあ……。私にも、よく…わからない」
「…不思議なやつだな」
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作者名:國子 | 作成日時:2018年10月4日 1時