11話「似た者」 ページ11
『ゲーム病である事を、彼には秘密にしておいて欲しい』
ゲーム病患者として運ばれてきた、音大に通う女子大生。
そんな彼女の願いを、私はある人物に重ねた。
五年前、ゲーム病で消滅した百瀬小姫。
鏡飛彩の恋人だった女性だ。
彼女もまた、鏡飛彩の負担になりたくないと、自らの病を秘密にしていた。
彼女に似ていて、自然と重ねてしまう。
鏡飛彩自身も、そんな彼女を自分の彼女である百瀬小姫に重ねているようだった。
私のよく知る彼女がゲーム病になったのは、百瀬小姫が消滅して少し経った後。
彼女は百瀬小姫とは親友と呼ばれる関係だったらしい。
親友とは何か、と私はかつて彼女に訪ねたことがあった。
「ずっと一緒にいて、楽しい人。悲しい時でもいっしょにいてくれる。親友って、言葉で簡単には言い表せないものだよ」
私は彼女から色々な事を学んだ。
何より一番よくわからなかったのは、人間が一般的に『恋』や『愛』と呼ぶ感情。
嬉しいこと、哀しいこと、楽しいこと。
それらは教えてもらえたが、人間が言う『怒りの感情』と『恋』や『愛』はよくわからなかった。
彼女は人や物に対して怒るという感情を持っていなかった。
恋という感情は、私が理解しきれなかっただけだが。
「人間て…本当に面倒な生き物……」
誰もいない部屋で私は呟く。
永夢も明日那も、今は患者のいる病室で、ここには誰もいない。
だからこうしてふと声に出して呟いても問題はない。
「Aちゃん!バグスターが出たから行ってくる!!患者さんのことお願い!」
「わかった」
病室からの明日那の声に頷き、私は席を立つ。
二人と入れ替わるように病室に入り、患者の容態を見る。
バグスターが暴れまわっているせいで患者は苦しそうだった。
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作者名:國子 | 作成日時:2018年10月4日 1時