第肆拾伍話、遭逢 ページ46
相変わらず風は強く、窓は音を立てて揺れている。ここに来てから時間がそれなりに経ち、慣れてしまった環境に福沢はため息をつきたい気持ちになった。
電波が悪く、携帯すらまともに使えないこの田舎町で起きた事件は、乱歩の推理力によって無事に解決したものの、暴風警報が発令してしまい、町から出られなくなってしまった。一刻も早く探偵社に戻りたいというのに、なんてタイミングが悪いのだろう。
福沢は、ソファで横になって瞳を閉じる乱歩に視線を向けた。
この部屋にいる間、乱歩はずっと同じ体制だ。普段ならば「飽きた」「帰りたい」「お菓子が食べたい」と子どものように騒ぐというのに、水を打ったように静かな彼を心配に思う。
もう一度、乱歩を見る。
やはり瞳は閉ざされたままだった。
_四年前
「お腹空いた!どこか連れてって」
「えぇ…」
目の前にいる北原_Aは顔を顰めた。
Aにかけられた容疑をあっさりと解き、見事真犯人を言い当てて事件に幕を閉じさせた青年は支局当たり前だとでも言いたげである。
「事件の解決の後はやっぱり糖分をとらないとね!そうだなあ、今は久々に西洋菓子が食べたい気分」
「さらっと注文付きかよ」
一歩も引く様子のない乱歩にため息を零す。このまま放って置くこともできるが、恩人でもある彼にそんな扱いはできない。
女性社員達の間で流行っている喫茶店へと連れて行った。帰ろうとしたが、「国木田が来るまで付き合ってよ」と言われ、結局一緒に座っている。
乱歩はチョコレートケーキを、Aは珈琲を頼んだ。
そこから他愛もない話をしていたら、意外にも盛り上がった。乱歩がうずまきを紹介してくれたおかげで付き合いは続き、いつの間にか仲の良い友人となっていた。
なっていた、筈だった。
乱歩の瞳が開かれる。
深緑色に込められた感情が何なのか、当の本人しかわからない。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時