第参拾漆話、誤解 ページ38
「谷崎さんッ!!」
敦の悲痛な声が空気を揺らす。
隣で立っていた筈の谷崎は、異能を発動させる直前に回し蹴りを食らい、本棚に衝突。鳩尾を狙われたせいで、暫くは動けないだろう。
「潤の異能は厄介だからな。悪いけど、先にやらせてもらったよ」
目にかかった前髪を書き上げながら、北原は飄々と告げる。
敦は今、この瞬間で、やっと理解できた。
頭の中で継承が鳴り響く。赤いランプがぐるぐると回りながら危険を知らせる。
すぐにこの男を倒さなければ、取り返しのつかない事になる。
異能力_『月下獣』
腕を虎の脚へと変化させる。黒い斑点がある白い毛並みを持つ、逞しい腕が現れた。
一瞬で意識を失うよう、脳天めがけて拳を振り落とす。
普通の人間ならば、これだけで白目を剥いて地面に伏せる。
だが、現状はどうだ。
敦の拳は、北原の頭脳でいとも簡単に止められている。動かそうにも、まるで固まったかのようにぴくりとも動かすことができない。
腕だけでない。
内側から筋肉組織を止められたかのようだ。
となれば、懐はがら空き。
防ぐ暇もなく、敦の懐に足蹴が鋭く刺さる。
続けて顎を強く殴られた。脳が揺れ、視界が定まらず、足も体を支える事ができずにその場に崩れ落ちた。
「ぐ、ぁ…」
「そのままジッとしてろよ」
北原がそう言った直後、両腕が背中に回されてた。
もちろん、敦自身の意思でもない。けれど、北原はその場から一歩も動いていない。
敦の腕を回せる人物は、この部屋に誰一人としていなかった。
敦は奥歯を噛み締め、北原を見上げる。
「な、にを…したん、です」
「俺の異能だよ」
「貴方の、異能は、触れた物を自在に操ることで…」
「俺が、いつ、どこで、
北原はしゃがみ、膝の上に肘を置く。
手のひらに顎を乗せて、にこりと笑った。
「ま、日本語って難しいもんな。ご褒美として、わかりやすく教えてやるよ。
俺の異能は、触れた
その両手に、いつもはめられていた黒い革手袋はなかった。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時