【文スト】参謀とは。白編【DEAD APPLE】

初耳とは。 ページ33

No side


歩く度に金属音が鳴る。
前に目を向ければ芥川の背中があった。


結局敦は鏡花に流れるまま、芥川と共に行動していた。


「鏡花ちゃん、何でこんな奴と行くの？」

「情報を持ってる。このマフィアの秘密通路も使える」


鏡花が淡々と答えた。


「何より、異能力を取り戻した彼は戦力になる。澁澤を排除する目的は同じ」


確かに正論だった。

外で異能に襲われるより、異能が入れないこの通路を使う方が安全だ。それと共に、澁澤の元へも行ける。

それには芥川が必要不可欠。


鏡花は合理的な判断をしただけだ。

けれど敦はなんとなく納得がいかず「だけど...」と零した。
かといってほかの手段が思いつかず、俯いてしまった。


「鏡花、母親の形見の携帯は、まだ大事にしているようだな」

「母親？」


唐突の言葉に、敦が足を止める。

芥川は立ち止まり振り向いた。


「そんなことも聞いていないのか」


聞いてない。

鏡花が肌身離さず持っていた携帯は母親の形見だったからだ。


会話を断ち切るように、前から鏡花が芥川へ問いかけた。


「最短ルートは？」

「ゼロゴーゼロゴー」


芥川は即答した。
ポートマフィアの隠語なのだろうか。

当然ながら、敦には何のことか判らなかった。









マンホールを開け、漸く地上に出ることが出来た。

濃い霧の向こうに幾つもの建物が見える。


ふと、芥川が何かに気づき顔を上げた。


「どうやら...待っていたようだな」


芥川が見据えるのは、霧の向こう側にある建物。
その屋上に、黒い布を生き物のように蠢かす『羅生門』の姿があった。

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