救われた者達とは。 ページ45
No side
Aはニコリと笑う。
『ないです』
「…そうかい」
断られるのを判っていたのか、与謝野は落ち着いていた。
少し間を開け、Aを見据える。
「妾は純粋に疑問なんだ…森医師の本性を知っていて、何で一緒にいられる?何で従えられる?」
与謝野の頭脳に昔の出来事が浮かぶ。
火薬に混じった血の臭い。
痛みに苦しみ嘆く声。
心が崩れ落ちていく音。
「帰りたい」「辞めたい」「戦えない」「許して」
神に懇願するかのように繰り返される言葉。
終止符を打とうにも、それは幾度も破られた。
希望は簡単に砕け散った。
『あの人が私を養子にしてマフィアに、招いた理由は、当時のマフィアの戦力拡大でした』
突然の言葉に、記憶の映像が途絶えた。
Aを見れば与謝野に背を向け夕日を見ている。
森が直接言う筈がない。
Aは、最初から判っていたのだ。
与謝野は口を開きかけた。
けれど言葉を発することができなかった。
『それでもいい』
Aが笑っていたから。
『あの人は鎖を壊してくれた。家族と…娘と言ってくれた。私が諦めていたものを、あの人は凡てくれた。
女医さんが名探偵さんと福沢社長に救われたように、私はあの人に救われたんです。今の私がいるのは、リンタロウさんの御蔭なんです』
与謝野は言葉を失った。
それは純粋すぎる忠誠心。
純白のようで純黒の、綺麗すぎる気持ち。
『まぁ、本人に言うと調子に乗るんで、このことは秘密で』
口元に人差し指を当てる。
お茶目な姿に与謝野もクスリと笑った。
「勿論言わないさ。森医師は調子に乗ると結構めんどくさい」
『その通りです。さ、行きましょっか』
再び歩き出す。
少し先を行くAを静かに見つめた。
「…善かったな、森医師」
ぽつりと呟いたその言葉は、夕日に溶けて消えていった。
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玲佳(プロフ) - 凄く面白かったです! (2019年12月31日 19時) (レス) id: 30c7137208 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ちびうささん» そう言っていただけて光栄です。イラスト…!!是非お願いします、ありがとうございます!!待ってます(正座)更新頑張りますね! (2019年1月29日 0時) (レス) id: 5c7b126db4 (このIDを非表示/違反報告)
ちびうさ(プロフ) - この小説シリーズ面白くてあっという間に読んでしまった、、、。私ツイッターとかでお絵かきしてるのですがよろしければ参謀ちゃんのイラスト描かせていただきたいです!!更新楽しみに待ってます!!! (2019年1月27日 17時) (レス) id: f5433967f3 (このIDを非表示/違反報告)
はつり(プロフ) - RANAさん» もちろんです!ありがとうございます〜 (2019年1月18日 20時) (レス) id: 3cbdf99785 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - はつりさん» わざわざありがとうございます!!和装徳永とても嬉しいです!!!おにぎりは森さんに買ってもらったんですね(( ありがとうございます!!もしよろしければ小説に載せたいのですがいいでしょうか? (2019年1月18日 19時) (レス) id: 5c7b126db4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2018年7月1日 18時