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liqueur:9 ページ10

男の人の部屋に上がることに若干の抵抗はあった。


「どうぞ」

「…お邪魔します」


けどたぶん彼のことをなんとなく信用できた。


車もさることながら見るからに家賃が高そうな部屋のおかげで降谷くんって実はめちゃくちゃお偉い社長なのでは…と格差を感じ緊張せざるを得ないけど。


「適当に座っててください」


先に部屋に入った彼は戸棚を弄りながらそう言った。


指示に従いソファに座る。

ジロジロと部屋を見渡すのは失礼かと思いあまり周りを見てないがわざわざ見なくても目に付くものが明らかに少ない、殺風景で、広くて、少し寒い。


「あー…」


声がした方を見ると冷蔵庫を開けている彼。


「コンビニに寄ればよかったですね」

「え?」

「うちコーヒーと水くらいしかなくて」

「お水で大丈夫です。というかお構いなく…」


なんて建前をとりあえず言っておくが正直色々と緊張して口が渇き切っているから苦くない飲み物ならなんでもいい。今すぐ飲みたい。


そんな本音を隠して取り繕って笑ってみせた。


「ミルクティーはどうですか?」

「美味しそうですね」

「じゃあ牛乳も砂糖も多めに入れますね」


そう言われときなんともいえないぞわりとした違和感に襲われた。


なんで牛乳も砂糖も多めに入れてくれるんだ?苦いものが苦手な私にとってそれは有難いことだがなぜそれを彼の方から提案してくれたんだ?


「どうぞ」


コトンと湯気が立つカップが目の前に置かれお礼を言ってからそれを違和感ごと胃に流し込む。


「…おいしい」

「それはよかった」


人が一人余裕で座れるほどの間を開けて彼もソファに腰を下ろした。ちらりと盗み見たカップには真っ黒で苦そうな液体が湯気を立てている。


温かい物を体に入れたことで少しだけ。本当に少しだけ落ち着いたんだと思う。

だから何を話せばいいか考えて悩んで息苦しくなる前にぽろっと言葉が出てきた。


「私がコーヒー苦手なの、知ってるんですか?」

「…萩原が言ってました」


ふっと笑って降谷くんはコーヒーを口にした。



隣にいる彼が降谷くんだということはここに来るまでの車内でわかったはずなのに。

研二の名前を彼の口から聞いて、ああ、この人はあいつのことを知ってるんだなぁ、本当にこの人は降谷くんなんだなぁと思うと同時にじんわり視界が滲んだ。


すぐにあったかくて甘いのを流し込んだら熱さで自然と涙が出た。

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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時

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