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liqueur:10 ページ11

何度目かの気まずい沈黙。今度は先ほどのように自然と言葉は出てこない。


どうしよう。なに、何から聞けば、何を、聞けばいいんだろう。数分前は自然と質問が出たのに。


ずっと黙ってるわけにはいかないから早く言わなきゃ何か言わなきゃと内心忙しなく焦っていると隣で小さく笑う声がした。

反射的にそちらを向く。


「すみません」


そう言いつつも彼はひとり、くつくつと静かに笑ってる。


「なんていうか、予想と違って」


彼が何を言っているのか、なぜ笑っているのかわからない。


「だってたぶん、聞きたいことは他にもあると思うんです。色々と。僕も何を質問されるかなーって予想を立ててたんですけど」


ひとしきり笑って、ゆっくりと視線がかち合う。


うわ、ほんとイケメン…。


なんでこんなときにそんなことをと思ったが思ったのだから仕方ない。

でもそのおかげか。ピンと張りつめて息苦しかった空間と知らないうちに強張っていた体がゆっくりと解れていくような。そんな気がした。


「それなのに……コーヒーが苦手なのを知ってるのか?って」


言いながらまた。今度は先ほどより幾分か大きく笑い始めた彼。

そんな彼を見て確実に緊張より意味が分からないといった感情が上回る。目の前で起こっている状況が全くもって意味がわからない。


「な…んで、そんなに笑ってるんですか」


だからまた自然と言葉が出た。


「だってそんなこと聞かれると思わなかったから」

「にしても笑いすぎじゃないですか」

「予想外で、なんか、思い出したら面白くなってきて」


それから少ししてふうと一息ついて笑いが収まるまでの彼を瞳に捉えたまま。

あれ?普通に会話できてる。緊張もさっきより全然してないな。この人こんなに笑うのか。


そんなことを思った。


なぜか先ほどまでの空気の重さみたいな。気まずさをあまり感じない。息が苦しくない。そう思う自分に困惑する。


でもだったら、この勢いのまま今のうちに聞きたいこと全て聞いてしまえばいいんじゃないか?順番なんてどうでもいい。思ったこと全部口にしてしまえ。


ようやく笑いが収まりコーヒーを飲んでいる彼に


「色々と…聞いてもいいですか?」

「いいですよ。僕も説明したいことがあって、だから僕の家にしたんです」


もうあまり萎縮していない。緊張がだいぶ解れたみたいだ。

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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時

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