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「あっという間ですな〜」

「早いですな〜」


馬鹿みたいにテンションを上げてじゃんじゃん花火に火を灯してシュワシュワと音を立て様々な色や出方を楽しんでいたらあっという間に線香花火のみになってしまった。


それまで少し離れて手に花火を持って楽しんでいた距離は

どちらの線香花火の火が長く持つかというありきたりな勝負のために腕がぶつかるほど近い距離に縮み仲良く座り込んでいる。


「早く落ちろ」

「ちょい!受験生に落ちろは厳禁!」

「あ、そっか。じゃあなんて言う?消えろ?」

「えー、なんだろ…」


確かに落ちろはよろしくないと二人で代わりの言葉は何だとウンウン悩んでいたら


「あ、落ちた」


萩原の持つ線香花火の火がぽとり、地面に落ちた。


「萩原も落ちたって言ってるじゃん」

「あー!よくない!…地面に消えた!」

「地面に消えたね」


ガバッと勢いよく立ち上がった萩原をしゃがんだまま笑って見上げる。


「この勝負は私の勝ちー」

「おー。立ったついでになんか飲み物買ってくんね」

「えっ」


ここからでも見える二台の自動販売機の光。全然遠くない。たぶん50メートルもないくらいの短い距離。

だけど無人の、夜の、暗い公園。近くにはブランコやシーソー。

それらを材料に一瞬で色々な霊的妄想が頭に浮かび、思わず萩原のTシャツを掴んだ。


「うわっ、なに」

「…私も行く」

「え?いいよ俺買ってくるよ」

「行く」


問答無用。掴んだ反動で火も地面に落ち………消えたし。

すくっと立ち上がり行こうと促す私に刺さる視線。


「なに」

「一人になんの怖かった?」


意地悪な言い方でもからかうような言い方でもなくただただ不思議そうに問う声色だったから素直に肯定すると

「そかそか」

少し楽しそうにそう言われ認めなきゃよかったと後悔した。


「うざ。笑うな」

「だってずっと裾掴まれてんだもん」


その指摘に無意識に掴み続けていた萩原の服から手を引く。


「いきなりブランコ揺れだしたりしたら怖くない?」

「ないよ」

「あるかもしれないじゃん!」

「ないない」

「小さい子の幽霊がブランコ漕いでるんだよ…」

「なんで自分から怖い方に持ってくの??」


そんな不毛なやり取りは自販機で飲み物を買い元の場所に戻って勝負を再開してからも続いた。

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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時

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