liqueur:18 ページ20
「降谷くんは、あの…」
なんて言えばいいんだろうと言葉が見つからず金魚のように口をはくはくさせる。
「こういった話は、あまりしたくないでしょうか…」
「こういった話…?」
「みんなについての思い出話、といいますか…」
人によっては悲しくなるから、辛くなるから。だからあまり話題にしたくないかもしれない。
彼がそうなら、もうこの話も、私がしたかった話も、全部無しだ。
そもそもが身勝手で自己中心的な願望だったんだからそれならいっそ諦めがつく。
「Aさんはどうなんですか?」
「えっ」
少し鋭く感じる視線にまるで醜い心の内を見透かされているような気がしてならない。蛇に睨まれた蛙のようでなんて滑稽だろう。
「俺は…あいつらの話ができるなんて素直に嬉しいです」
「…っ」
「あなたは?」
彼らのことを思い出しているのだろうか。
問いかける降谷くんの表情は、とても穏やかで、でも少し泣きそうにも見えた。
「…私は…」
私は、一体どうしたいんだろう。
降谷くんと再会して話をしてみたいと思った。
でも彼からしたら迷惑な話だろうとまた一人からっぽの日常に身を寄せた。
あいつがいなくなってからそれが私にとっての当たり前だったから特に変わりなかった。
私にとって忘れたくなくて、忘れたくて、忘れられない時間と思い出。
降谷くんとこうして話をしてみてあの頃が少し過ぎった。霞んでいたけどとても懐かしかった。
けれど彼らはもういないと知って身に覚えのある虚無感に襲われた。
彼らの話ができることを嬉しいと言った降谷くん。
私は思い出を聞いたり、話したりして、嬉しいと思うのだろうか。
わからない。考えるほどぐちゃぐちゃになっていく。
だって今までずっと気にしないようにしてきたから。今さら向き合い方なんてわからない。
もう会えないんだとわかっていることを突きつけられるのが怖い。
それなのに色褪せて曖昧になっていくことを恐れてなんとか必死に過去にしがみつこうともがいてる。
とんだ矛盾だ。
見知った部屋の中で蹲ってずっとあなたとの時間を思い返す狭い狭い世界が私の安寧。
思い出に溺れたい。現実が怖い。知りたい。聞きたくない。一体どうしたい。わからない。
「私は……」
176人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時