【東リベ】早く起きろよ、バーカ【真一郎】

15 ページ15

毎日真一郎のお見舞いに行く。


それは変わらず。


けどたまに、あたしは別の場所に行く。


車で向かった先は、シャッターに落書きがされた、元々真一郎のバイク屋があった場所。


大家さんに無理を言って、店の中はそのままにしてある。


流石に看板は外しちゃったけどね。


たまに真一郎を慕ってた誰かが入ってるっぽいけど、悪さをしないならいいやって放っておいてる。


ここは真一郎を思い出せる場所だから。


進んでそれを奪う様な真似はしたくない。





「さすがに掃除しないと、そろそろホコリがやばいな……」





裏口から入って、カウンターに積もったホコリを指でなぞる。


薄らと積もったホコリが拭われて、拭き取った面が露わになった。


新品や中古の、オーナーがまだ決まっていないバイクたち。


バイクにはカバーをかけているものの、他はそのままで、あたしは定期的に訪れては掃除をしている。





「感謝しろよー。しんいちろー」





誰のためにこのお店、残してあげてるんだか。


軽くホコリを払った椅子に座る。


いつもあたしが真一郎の店に来たら座ってた椅子。


この位置から仕事をする、バイクを弄る真一郎の姿を見るのが好きだった。





『A、そこにあるレンチ取って』


『自分で取れば？』


『Aの方が近いだろ』


『ったく、仕方ないな……。コレ？』


『おー、サンキュー』





真一郎がいたら、今も続いてたであろうバイク屋。


あたしは前みたいにバイト終わりに寄ったりしてたかな、なんて。


それとも真一郎と結婚して、バイク屋の手伝いでも始めてたかな。





「……あれこれ考えたって意味ないか。掃除しよ」





タオルでホコリを拭いたり、箒で床を掃いたり。


しばらく掃除して、店を綺麗にしてから、あたしはその場を後にした。


向かう先は真一郎が入院してる病院。


今日店の掃除してきたよって報告するんだ。


それから読もうと思ってた本を読んで、時間を潰して、時間になったら帰って。


そう言えばエマが用があるから帰りに寄ってって言ってたな、用ってなんだろ。

16→←14

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す