キャンディ�� ページ2
最初こそ眉をひそめていた彼だったが、しだいに瞳が爛々と輝きはじめた。
「お、お姉さま……」
「うん？」
「これは一体なんですか！なめればなめるほど味がします！」
「ええと……これ、『飴』っていうの。英語だと……キャンディとか、ドロップって言うのかな」
「なるほど、これが噂のキャンディなのですね」
反応から予測はしていたけれど、少し面喰ってしまう。
やっぱり飴、もといキャンディの存在を知らなかったらしい。
改めて彼が筋金入りのお坊ちゃまだということを認識してしまう。
「はぁ……なんてdeliciousなのでしょう……！お姉さま、これはどこで売っているのですか？」
「コンビニとかスーパーとか、駄菓子屋さんとかで売ってると思うけど……」
彼は私の行った言葉を、聞き慣れない異国語のように「『こんびに』、『すーぱー』、『だがしやさん』」と繰り返す。
どうもいまいちピンとこないらしい。
そりゃそうだろう。コンビニやスーパーはともかく、駄菓子屋は彼のいう『庶民』の子供が足繁く通う場所なのだから、彼は存在すら知らないに違いない。
「また今度、連れて行こうか？」
そう申しでると、彼はぱあっと顔を輝かせて「はいっ、お願いします」と弾んだ声で返事した。
その様子が、なんだかかわいらしくて、私は笑みをこぼしながら彼の頭をよしよしと撫でる。
「お姉さま？どうして頭を……？」
「ふふ、司くんが可愛いからだよ」
「か、かわ……？」
どうやらショックだったらしく「うう」とうなりながらも口の中のキャンディをなめ続ける様は、誰がどうみたって愛らしいはずだ。
私は可愛い『弟』の姿を横目に、自分も鞄からキャンディの包みをひとつ出して、包装を破った。
中には丸くて黄色い玉。口に含んでみると、レモン味のようだった。
「レモン、か……」
「？レモンがどうかしましたか？」
「ううん、ちょっと、前の学校で友達から聞いた話を思い出しちゃって」
「へえ、それは一体どういうお話なのですか？」
「『初恋と、ファーストキスはレモンの味』」
「き、ききっ、kissですか」
「甘酸っぱいんだって。私は、したことないから知らないけど」
司くんは？と尋ねるとぶんぶんと勢いよく頭を振られて思わず笑ってしまう。
そっと唇に指を添えて、考える。
いつか自分も誰かとすることになるのだろうか。
願わくば、それは好きな人とがいい。
レモン味のキャンディが溶ける中で、密かにそんなことを思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凪湖(プロフ) - はる。さん» リクエストありがとうございます…！ポテチ食べるの絶対かわいいですね……受験が落ち着いてからになる可能性が高いですが必ず書かせていただきます！(^ｰ^) (2017年7月18日 15時) (
レス) id: 164e72d894 (このIDを非表示/違反報告)
はる。(プロフ) - かさくんと転校生ちゃんがポテトチップスのり塩味LLサイズ食べてるところを見たいです…！ついでに瀬名先輩に見つかったらもっといいです…！リクエスト書いて下さると嬉しいです！宜しくお願いします。 (2017年7月12日 7時) (レス) id: 905d58e753 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：凪湖 | 作成日時：2017年7月2日 14時
