まだまだ進歩途中の兎/２ ページ14
.
「久しぶりだな、Aちん。元気にしてたか？」
「ええ、おかげさまで。なずこそ自分の殻を破ることが出来たのね」
「へへ、これもAちんのおかげだけどな！」
照れくさそうに笑顔を浮かべるなず。宗の元にいた頃とは全くの真逆の表情。私は貴方のその笑顔が見たかった。笑わない人形なんかじゃなく喜怒哀楽を浮かべる貴方のありのままの笑顔が。
「Aちんはその……大丈夫なのか？」
「！ふふ、なずも同じこと言うのね。心配してくれるの？」
「当たり前だりょ！Aちんが零ちんたちと気まずくなってるのは３年生の皆が知ってる。あんな事があって絶対戻ってこないと思ってたのに……」
なずなにも随分迷惑をかけてしまった。そして私たちの間に溝が出来たあの事件はきっと全員が覚えているだろう。
「大丈夫じゃないと言えば嘘になる。でも皆と向き合えるいい機会になるでしょ？それにドリフェスも任せられたしね」
「……Aちんは強いなぁ。俺だったら逃げ出しちゃうりょ」
「ふふ、何言ってるの。私だって怖いわよ」
「！」
なずなが私の手を見て目を見開く。私の手は凝視しなければ分からないほどだが震えていた。真に聞かれた時もそう。泉のことを聞かれた時も当時のことを思い出して震えてしまう。
私は過去ばかりを引きずる臆病者だ。心配される筋合いなんて、ない。
「安心してくれ、Aちん」
「！」
「もう誰もAちんのことを恨んでいない。Aちんを傷つけるやつなんかもう居ないんだ。忘れろって言ったって無理かもしれない。でも少しづつでも一緒に過去を乗り越えよう」
「なず……」
「兄ちゃんがついてるだりょ！」
私の震える手を握りニカッと笑顔で笑ったなずな。あの頃とは反対だ。私が落ち込み、なずなが励ましてくれる。
ああ、誰かが着いているってこんなにも安心するものなんだね。あの頃はわからなかった。皆を守るのに必死で自分のことなんか後回しで。………とても暖かい。
いつの間にか手の震えは止まっていた。
「ありがとう、なずな。これからもよろしくね」
「ああ！」
握られた手を握り返し私は泣きそうなのがバレないように下手くそな笑顔でなずなに笑い返した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 902人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スパイペンギン(プロフ) - とても面白いです！。更新楽しみにしてます！ (2023年4月30日 23時) (
レス) @page18 id: 4ab78818d7 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新が無くて寂しいです。更新してくれたら嬉しく思います。楽しみに待ってます。 (2021年10月25日 12時) (レス) @page13 id: e9f0e4b4b1 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - とっても面白いです!これからも頑張ってください！！ (2020年11月21日 15時) (レス) id: 7ef4eb4ee1 (このIDを非表示/違反報告)
天 - 続きが気になる!!夢主ちゃんに何があったの〜!続き、楽しみにしてます (2020年11月16日 16時) (レス) id: d68e470ef6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：。 | 作成日時：2020年11月3日 22時
