猫被ってたら、彼と出会った。【赤司征十郎】

猫かぶり５３ ページ27

赤司も優しかったな
なんて、考えてみる。

でも

今は和成の隣の方が心地良い気がする。


「…で、何があったの」

いつになく優しい声音で聞いてくる和成。

顔を覗かれると、ちょっとキュンとして
赤司の事をまた思い出してしまった。

「ッごめん…」

地面に落ちていく水滴は、足元をぬらしていく。

「…大丈夫。何があったのか、俺に話さねえ？
ちょっとは気が楽になると思うし」

頭を撫でてくれる手は力強くて

なおさら涙が止まらなかった。




こういうところは、昔と変わらない。

私を止めてくれた時も、こうやって

頭を撫でて

「大丈夫、俺がついてるから」

って呟いてくれて


あの時もこんな風に泣いたっけ。


気が付いたら、和成は私の手を握って
少し前を歩いていた。

「とりあえずどっか座ろうぜ。
落ち着いてからの方がいいだろ？」

振り向いて少し笑う彼は
赤司に負けないくらいカッコ良かった。


嗚呼、何故
何か考えるたびに赤司のことを思い出してしまうんだろう。

繋がれた手だって

笑顔だって

全部赤司に重なって見えるよ

…何故、こんなにも涙が止まらないんだろう。

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