第60話 シアタールーム ページ10
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そんなこんなであっという間に時間は過ぎた。
ほんとに、ここ数日でいろんなことがあったよなぁと、大画面に映る映像を見ながら、あくびを噛み殺した。
早めの夕食を終え、シャワーを浴びた後、秋に連れられて来たシアタールーム。
既に各々好きな席に座ってるみんなに軽くお辞儀をして、一番後ろの真ん中、腕を組んで座ってる修也の隣にゆっくりと腰掛けた。
「シアタールームまであるんだね。びっくりした」
「俺もだ」
島をひとつ所有していること、綺麗なビーチとホテルみたいな建物。それとシアタールーム。
夏未ちゃん、セレブだとは聞いていたけれど、ここまでだとは思わなかった。
何度でも驚く。私とは住む世界が違う、はちゃめちゃなスケール感。
正直、とっても憧れちゃう。
まあ、そんなことは置いといて。
せっかくシアタールームがあるんだし、映画でも観ようってことで、今こうしてみんなで集まっているんだけど……。
映画が始まってすぐに気づいた。
この映画、先週末に某動画配信サービスで観たばかりなんだよね…。
静かめの感動系ムービーで、なかなかおもしろかった。
そう。おもしろいのはおもしろいんだけど……。
2回目、しかも期間をほとんど空けず…となると、なかなか厳しい。
さっきからあくびが止まらない。
それに気づいたのか、修也がとんとんと私の肩を叩いた。
「A、寝てても良いんだぞ」
『肩貸すから』と、こそこそっと耳打ちする。
『いいの?』と、目を見つめて首を傾げた。
すると、目を細めた修也が私の髪をさらりと撫でて、頭を抱き寄せた。
「ありがとね。終わったら起こして」
「ああ。わかった」
軽く伸びをしたあと、修也の肩に頭を預けて、重たくなった瞼を閉じた。
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作者名:pomme | 作成日時:2021年3月22日 10時