第59話 理屈とその先と ページ9
．
のんびり朝ごはんを食べた後、みんなでサッカーをした。
こんなときまでしなくたって…ってなるけど、彼らならしない方が違和感あるよなぁとか思いつつ、私も少しだけ混ぜてもらった。
そしてね、これがうん。まあ、私にとっては悲劇だった。
見てるぶんには簡単そうなのにさ。
何でかなぁ。全然できないのよ。ほんっとに、びっくりするくらい。
よくもまあここまで普通にマネージャー業やってたなぁって自分でも思う。もちろん、みんなからも言われた。
どこ行っちゃったの？私の運動神経……。
遥か彼方、手の届かないところに行ってしまったそれを恨めしく思った。
昼食を食べてもなお、みんなはサッカーに夢中。
緊張感の漂う殺伐とした試合なんかとは違って、みんなこの上なく楽しそうにボールを追いかけてた。
リラックスしてるからなのか、連携技もいつもより上手くできちゃったりしてて、試合のときもその感じで行こうぜってみんな言ってる。
たぶん、そんな簡単な話ではないんだと思うけど。
て、私が言っても何の説得力もないか。
「Aー、そこのボールこっちに蹴ってくれ！」
えぇ…、私に言う？それ。
修也が片手を上げて私に合図を送る。
ねぇ、午前中の私の失態見てたよね？なに？冗談だよね？
蹴る、とは。
ボールを足元に置いて、じっくり眺める。
きっと、ここを蹴ったらいい感じの角度であっちに飛ばせる。
理屈はわかる。理屈だけは。
ちゃんと実行できるかは別物。
「よし」
右足を後ろに引いて、ここで勢いつけて……。
……なぜかボールが10�僂�らいしか進んでない。
なにこれ。どういう仕組み？
何で前に飛ばないの？
「A、何やってるんだ？」
コートに立ってたはずの修也がいつの間にか目の前にいて、心底不思議そうな顔で私を見下ろしてる。
何って、蹴ってんの。ボールを。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：pomme | 作成日時：2021年3月22日 10時
