第73話 おんなじ気持ち ページ23
.
カチャリと音がして、鍵が閉まった。
シンと静まり返る空間。
ゆっくり振り返った修也が私を見てる。
怪我してないし、何で連れてこられたのかわかんない。けど、心臓はずっとドキドキいってる。おかしなくらい。
「あの、修也…?」
表情を伺うように上目遣いに尋ねると、何も言わないまま、私の頭をくしゃりと撫でたあと、ぎゅーっと抱きしめた。
混乱しながら、恐る恐るその背中に手を回す。
すると、修也は私の額にキスした。
「わっ」
びっくりして、修也の胸に顔を埋めた。何、急に。額だけじゃ治らない熱が、じわじわと身体全体に広がる。
そんな私を見て、修也はフッと笑った。
でも私知ってるよ。
そんな余裕そうな顔してるけど、君だって今、けっこうドキドキしてること。
修也の胸に耳当ててるとさ、ほら、私とおんなじくらいドキドキいってる。
それがたまんなく愛おしくて、胸の奥がぎゅってなった。
「A、好きだ」
修也が私の頭を撫でながら、唐突にそう言った。
なんか恥ずかしくて黙ってると、もう一回『好きだ』って言った修也が、私の頬に両手を添えて柔らかなキスをした。
不意に胸がいっぱいになって、泣きそうになった。胸の奥がさっきよりずっと苦しいのに、それなのに、泣きたくなるくらい暖かくて、ふわふわした。
「A、俺もな……、俺も、できれば毎日一緒にいたい。フッ、Aが嫌じゃなければな?」
私の反応を試すかのように、口角をあげる修也。
「嫌なわけないじゃん」
なんかちょっと悔しいけど、そう言うしかない。だってほら、私から言い始めたことだし……。
「フッ、そうか」
「なんで笑うの」
『別に』とか言いながら、まだニヤニヤしてる修也の肩をぺしっと叩いた。
86人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pomme | 作成日時:2021年3月22日 10時